写真1●YouTubeの利用状況。動画再生回数は1日に10億回以上,アップロードされる動画は毎分20時間分に上る
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写真2●コンテンツパートナー企業に提供される分析ツールの画面。コンテンツがどこまで視聴されたか,世界のどの地域からの視聴が多いかなど,視聴動向を細かく分析できる
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写真3●違法投稿動画検出システム「コンテンツID」の説明。ビデオ・カメラでテレビ画面を撮影したものでも検出できるという
写真3●違法投稿動画検出システム「コンテンツID」の説明。ビデオ・カメラでテレビ画面を撮影したものでも検出できるという
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写真4●YouTube事業の今後の方向性。ユーザーの満足とパートナーのビジネスを両立するビジネス・モデルを目指す
写真4●YouTube事業の今後の方向性。ユーザーの満足とパートナーのビジネスを両立するビジネス・モデルを目指す
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 動画共有サイト「YouTube」の日本版サービスを運営するグーグルは2009年9月29日,TBSテレビとテレビ朝日が公式コンテンツパートナー契約を締結し,両社が同日よりYouTube上でニュース映像などを配信すると発表した。

 TBSテレビはYouTube上に公式チャンネル「TBS News-i」(http://www.youtube.com/tbsnewsi)を,テレビ朝日は同様の公式チャンネルとして「ANN ニュースチャンネル」(http://www.youtube.com/ANNnewsCH)と「tvasahi チャンネル」(http://www.youtube.com/tvasahi)を開設した。ニュース番組の映像クリップや番組紹介の映像を配信する。サービス開始当初は広告を掲載しないが,放送事業者側の広告基準などの準備が整い次第広告掲載を開始し,グーグルと放送事業者で収益を分配する。

 米Google パートナー事業戦略担当副社長のDavid Eun氏は「日本は世界有数のビデオ・マーケット市場で,ポテンシャルの大きさを感じている。2007年以降,日本の放送事業者の意見も伺いながら導入をすすめてきた違法投稿動画検出システム『コンテンツID』などの取り組みが評価され,今回実を結んだ。今後もコンテンツIDシステムを進化,充実させ,利用者のニーズとパートナー企業のビジネスを両立できるモデルを展開したい」と今後の事業方針を説明した。

 記者会見に同席したTBSテレビ コンテンツ事業局長の氏家夏彦氏は,「2009年2月から3月にかけて自社サイトでドラマ作品の見逃し視聴配信実験を行った際に,YouTube上でコンテンツIDシステムを使い違法動画を検出・削除する実験も並行して実施した。その結果,ほとんどすべての違法動画をYouTube上から削除できたことから,YouTubeを活用した健全な動画ビジネスの展開をさらに検討するために,今回の提携に至った」とパートナー契約締結の経緯を説明した。さらに自社の動画配信サービス「TBSオンデマンド」で過去の名作ドラマをアーカイブ配信したところ,2009年8月の売り上げが前年同期比で5倍に増加した例を挙げ,「YouTubeでも有料配信をサービス展開できるシステムを早く構築してほしい。YouTubeとともに有料動画配信を大きく育てたい」と述べ,ニュース映像以外のコンテンツ提供にも積極的な姿勢を示した。

 同じく会見に同席したテレビ朝日 コンテンツビジネス局クロスメディア専任局長の古川柳子氏は「グーグルとの協議は違法投稿動画対策から始まり,コンテンツIDシステムの開発過程では処理速度や使い勝手についていろいろ注文させてもらった。精力的に対応してもらった結果,今回のシステムは使用に耐えると判断した」と,グーグルの違法動画に対する対策を評価した。また,YouTubeの動画配信プラットフォームとしての特徴として(1)利用者数が多い,(2)ワールド・ワイドに映像配信が可能,(3)ビジネス展開する際の自由度が高い――の三つを挙げた。中でも(2)については,「海外からのアクセス・ポイントとして,日本のニュースを世界に配信する場として活用したい。単にコンテンツを世界配信するだけでなく,今後はグローバルな広告展開を希望するクライアントの要望に対応できるよう,ビジネス面での活用も検討したい」とし,様々なビジネス・モデルを試す場として活用する方針を示した。

 今後動画配信サービスはYouTubeを中心に展開するのかという記者の質問に対して,「TBSテレビとしては全方位外交で進める。現在ヤフーやニワンゴにもコンテンツを提供しており,YouTubeも同様のコンテンツ提供先の一つ。TBSテレビがやろうとしていることと各サービスの特性が一番マッチングするところと,その都度話を進めたい」(TBSテレビの氏家氏)と答えた。また,テレビ朝日の古川氏は「テレビ朝日もTBSと同様のスタンス。コンテンツ提供の話はヤフーとも行っており,動画配信で放送事業者の陣営が二つに分かれたという構図ではない」と答え,今回のYouTubeとの事業提携を,2009年9月4日にフジテレビジョンと日本テレビ放送網がヤフー子会社の「GyaO」に出資したことへの対抗策と見る見方を否定した。