原口一博総務大臣は2009年9月29日の会見で,ICTの利活用による日本と諸外国が直面する経済的・社会的課題などの解決に貢献することを目的に,10月中をメドに総務大臣主催の会議「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(仮称)を設置すると発表した。タスクフォースは今後の検討事項案として,(1)過去の競争政策のレビュー,(2)電気通信市場の環境変化への対応,(3)ICT産業全般の国際競争力強化,(4)地球的課題などの解決への貢献――の四つを挙げている。

 (1)の過去の競争政策のレビューでは,昭和60年(1985年)の電気通信市場の自由化や日本電信電話公社(現NTT)の民営化以降,講じられてきた各種規制緩和措置や制度改革などが電気通信市場の公正競争にもたらした効果などを検証する。(2)の電気通信市場の環境変化への対応に関しては,IP化やブロードバンド化,モバイル化など近年および将来の市場環境の変化を踏まえて,グローバルな視点から市場のさらなる発展に向けた課題の解決方策について検討する。「今後の電気通信市場の将来像」や「競争政策とユニバーサルサービス制度の在り方」,「国際競争力の強化と消費者の権利保障の在り方」などを検討の視点にする。

 (3)のICT産業全般の国際競争力強化では,少子高齢化による国内市場の縮小を補い,新たな雇用を創出するという観点から検討を行う。コンテンツ事業者やメーカーなどを含む幅広いICT 関連企業によるオール・ジャパン体制でのグローバル展開を促進する方策について議論する。(4)地球的課題などの解決への貢献に関しては,環境問題や医療問題といった世界各国が直面している地域的・地球的課題について,コンテンツの豊かな流通を含むICTの利活用により,すべての人々が等しく恩恵を享受できるような解決方策を検討する。

 なお会見では質疑応答が行われた。記者からの「自民党政権時代のNTTの見直しについての議論は脇に置いといて,タスクフォースで情報通信業界の競争環境を考えることになるのか」という質問に対しては,「自民党政権時における与党合意がどのような位置付けにあるのかについても,過去の競争政策レビューの対象となる」と述べた。また「自民党政権時における与党合意では2010年にNTT再編についての議論を行うことになっているが,これもレビューの対象になるのか」という質問については,「何かを聖域にして,『これは話さない』ということは考えていない」とした。