日本民間放送連盟は2009年9月17日,広瀬道貞会長(テレビ朝日顧問)の記者会見を開催した。民放連として新政権に求めることは何かという記者からの質問に対し,地上放送の完全デジタル化に向けた対策の推進を訴えた。

 広瀬会長は,2011年7月の完全デジタル化に向けて,「現在はいよいよ最終段階という中で,政権が変わった」という状況下で,民主党にも「地上放送のデジタル化を,自分たちの政策として取り組んでほしい」と述べた。

 広瀬会長が強調した政策は2点ある。一つは,経済的に困窮度の高い世帯に対して無償で簡易地上デジタル・チューナを配布するなどという事業である。約260万世帯が対象になるこの事業について,「国が約束をし,一部取り掛かってきた事業を,最後まで実行してほしい」と訴えた。

 もう一点は,放送ネットワークの整備である。「例えば1平方km当たり100世帯,200世帯という場所は,中継局を整備するなどしてカバーしていく。しかし,5世帯,10世帯,数十世帯といった場所は,恐らく2011年7月までに整備するのは無理だろう」とした上で,「アナログ時代は,政府が自治体に補助金を出し,地方自治体が放送局と一体になって時間をかけて,いわゆる山間へきちと言われる地域の中継局を,長い期間をかけて整備してきた。デジタルでも同様の取り組みが必要ではないか」とした。

<日本版FCCについて>
 次に,日本版FCC構想に対する見解を求める質問が出た。広瀬会長は,同日行われた原口総務大臣の「民主党の長年の主張であり,官僚依存政治からの脱却のために,言論の自由が大切」という会見内容を示した上で,「私自身も,言論・表現の自由をもっともっと享受したい。また社会に不可欠のものである」とし,「原点は高く評価したい」と応じた。

 その一方で,例えば米国のFCCでは,トップの委員5人のうち3人を議会の第一党が推薦するなどの例を紹介し,本当に「時の政治から完全に無縁というのは難しいと思う」とした。

 次にBPO(放送倫理・番組向上機構)が中立機関として放送内容への勧告などを行っていることを指し,「一番世界で民主的である」と述べた。

 その上で,「FCCによる判断と,BPOによる判断とどちらがいいのか,と問われると,私は今の段階ではBPOがいいと思う」を述べた。

 ただし,「ようやく政治を変えるときが来たんだという大きな流れの中で,日本版FCCはそのなかの一つに過ぎない。我々としても大きな問題にする気はなく,むしろ双方で知恵を出していきたい」とした。