写真●JR四国情報システム 情報システム担当課長の田中一人氏(撮影:皆木優子)
写真●JR四国情報システム 情報システム担当課長の田中一人氏(撮影:皆木優子)
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 「本稼働後のトラブルは0件。処理時間は20分の1になった。COBOLマイグレーションによって100点の成果を出せた」。JR四国情報システム(JRSIS) 情報システム担当課長の田中一人氏(写真)は2009年9月16日,COBOL開発者向けイベント「COBOLコンソーシアムセミナー in XDev」でJR四国(四国旅客鉄道)の基幹システムをメインフレームからオープン系に移行したプロジェクトの軌跡を披露した。

 JRSISが手がけたのは2004年からメインフレーム(ACOS4)で稼働していたJR四国の人事給与システムを,Windows Server 2003,Oracle Database 10g,WebLogic Server,Tuxedoなどで構成するオープン系インフラに刷新するプロジェクト。画面,キー操作,帳票機能などの操作性を踏襲しつつ,データをOracleに移行して将来のデータ活用の基盤を構築することを目標とした。

 コスト,開発期間,既存資産の有効活用などの面を勘案し,既存のCOBOLベースのシステムをマイグレーションし,必要に応じて一部リライトする手法を採用した。田中氏が成功のポイントとして挙げたのは,移行すべき資産の精査,精度の高いテスト・データ,プロジェクト全体での情報や意識の共有である。

 作業は2008年4月にスタート。「無駄な資産の移行は工数・期間の無駄遣い」として,移行対象となりうる3000本のCOBOLプログラムを800本に,1800本のJCL(ジョブ制御言語)プログラムを500本に絞り込んだ。「後工程になってから漏れが見つかると思わぬ工数と時間を費やすことになる。エディタやExcel VBAを利用して,全稼働資産を洗い出して選定した。実行ログに現れないプログラムも多数あった」。

 テスト・フェーズでは3カ月分の実データによる試験を実施してデータの網羅性を上げ,連日発生する問題点については専門要員の配置などで情報共有をスムーズにし,定期的な進捗会議で担当者間の意識共有も進めた。

 新システムの本稼働開始は2009年5月。予定通りの納期,コストで移行を完了した。メインフレームの撤去とオープン系インフラへの移行でランニング・コストの低減とインフラ変更の柔軟性を確保できたこと,データをOracleに移行したことで統計データの作成やマスターの修正が容易になったことなど「数々のメリットがあった」と13カ月にわたるプロジェクトを振り返った。メインフレーム系とオープン系のエンジニアが相互に交流を持てたことも成果として付け加えた。