「液晶技術者たちの30年の夢がかなった」――シャープの研究開発本部長で常務執行役員の水嶋 繁光氏は,発表会の壇上で声を高らかに上げた(写真1)。同社は2009年9月16日,液晶パネルに使われる新技術「UV2A」(2はVの乗数,「ユーヴイツーエー」と読む)を発表した。
UV2Aを採用した液晶パネルは,まず2009年10月に稼働開始予定の大阪・堺市の新工場で生産する。その後,三重・亀山市の亀山第2工場でも導入予定。水嶋氏は「UV2Aを採用することで,従来に比べてコントラスト比は1.6倍以上,応答性能は2倍以上,開口率は20%以上向上したパネルを生産できる。液晶のGeneration Change(世代交代)である」と説明した。
UV2Aとは,垂直配向(VA)タイプの液晶パネルに使われる技術。VAとは,液晶パネルに充てんされる液晶分子がパネル面に対して,電源がオフのときに垂直になるもの。オンのときは平行になる。ただし,正確にはすべての分子が垂直ではなく,一部はやや傾きを付けておく。こうしないと,電圧をかけても分子が傾かず,横向きにならないからだ。
シャープは,ガラス基板に塗布した自社開発の高分子膜に紫外線(UV光)を当てるだけでこの傾きを付けられるようにした。従来は,パネル内部にリブと呼ばれる構造物や電極にスリット(すき間)を作ることで分子を傾けるようにしていた。UV2Aではこれらが不要になるため,光が通る面積率(開口率)が向上し,コントラスト比がアップする(写真2)。さらに構造物によって分子が押し倒される従来の技術と違い,分子の向きが均一化されるため応答性能も高まる(写真3)。
UV2Aの基になっている光配向技術は,30年ほど前から学会などで話題になっていたもの。しかし,「量産どころか,自社内以外で試作機さえ見たことがなかった」(水嶋氏)という。同社は10年ほど前から量産ラインに採用したいと考え,研究を続けていた。今回,堺工場の稼働開始に合わせて量産ラインに採用できたのは「狙っていたわけでなく,幸い間に合ったというのが本音」(水嶋氏)としている。
■変更履歴 堺工場の稼働時期を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。 [2009/09/29 14:10] |