写真●マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 シニアプロダクトマネージャー 朝岡絵里子氏(撮影:皆木優子)
写真●マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 シニアプロダクトマネージャー 朝岡絵里子氏(撮影:皆木優子)
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 2007年に登場した時点では「高精細動画再生用プラグイン」程度の存在だった「Silverlight」は、2009年7月にリリースされた最新版「Silverlight 3」でWebブラウザ外でも動作するRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)基盤に進化した。マイクロソフトの朝岡絵里子氏(デベロッパー&プラットフォーム統括本部 シニアプロダクトマネージャー,写真)は2009年9月15日の「XDev2009」で、開発ツール「Expression」にも注目すべきポイントがあると語った。それが「プロトタイプ作り」だ。

 Silverlightは、ユーザーインターフェース(UI)に優れたRIAを実現するクライアントソフトウエアである。2007年に登場した「Silverlight 1.0」は、アプリケーションをJavaScriptで開発するWebブラウザ用のプラグインだったが、2008年にリリースされたSilverlight 2からは.NET Frameworkをベースにし、開発言語として「C#」などが利用可能になり、2009年7月にリリースされたSilverlight 3からはいよいよWebブラウザ外(デスクトップ上)やオフライン状態でもアプリケーションが利用できるようになった。

 Silverlightの開発ツールとしては、プログラマ向けの「Visual Studio」だけでなく、デザイナー向けの「Expression」も存在する。マイクロソフトの朝岡氏は、2009年9月に日本語版が開発完了(RTM)したばかりの「Expression 3」の最大の利点として、「プロトタイプ開発ができる『SketchFlow』という機能が搭載された」ことを挙げる。

 SketchFlowは、デザイナーが簡単なマウス操作だけで、アプリケーション画面のプロトタイプが開発できる機能だ。「アプリケーション開発を依頼する顧客は、『動くもの』を見ないと、自分がどのようなUIや機能を必要としているか、なかなか分からないもの。従来の開発では、ある程度アプリケーションができあがってから顧客の要望で機能の追加などが生じることが多く、『手戻り』が発生しやすかった」(朝岡氏)という。

 Expression 3のSketchFlowを使うと、画面遷移などを伴うSilverlightアプリケーションのプロトタイプが、プログラマに頼らずデザイナーだけで開発できる。顧客にプロトタイプを見せながらアプリケーションを開発できるようになるため、手戻りが少なくなる。ただし「デザイナー優先のアプリケーションは、得てして実運用に耐える性能を確保できない」(朝岡氏)ことも多い。そこでマイクロソフトは現在、業務アプリケーションに必要とされるデータアクセス機能などをパターン化したフレームワーク「.NET RIA Services」を開発している。

 .NET RIA Servicesは、「ASP.NET」や「ADO.NET Entity Framework」、「ADO.NET Data Services」といったサーバー側のアプリケーション機能と、マイクロソフトの新しいデータアクセス用言語「LINQ」を組み合わせたフレームワークである。RIA開発では、RIAを使ったクライアント側に実装するロジックと、Web/アプリケーションサーバー側に実装するロジックの両方を開発する必要があった。それが.NET RIA Servicesを使うことで、クライアント側とサーバー側のロジックを共通化できるようになり、開発生産性が高まるという。

 朝岡氏は「Silverlightは、コンシューマ向けのエンターテイメントアプリケーションだけを対象としたものではない。業務アプリケーションの開発にも適用できるアプリケーションプラットフォームだ」と、Silverlightの進化をアピールした。