写真1●左からカシオ日立モバイルコミュニケーションズの大石健樹社長,NECの大武章人取締役執行役員専務,カシオ計算機の高木明徳常務取締役,日立製作所の渡邉修徳コンシューマ事業本部長
写真1●左からカシオ日立モバイルコミュニケーションズの大石健樹社長,NECの大武章人取締役執行役員専務,カシオ計算機の高木明徳常務取締役,日立製作所の渡邉修徳コンシューマ事業本部長
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写真2●NECとカシオ日立の事業統合により補完関係が得られると説明する
写真2●NECとカシオ日立の事業統合により補完関係が得られると説明する
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 NEC,カシオ計算機,日立製作所の3社は2009年9月14日,各社の携帯端末事業を統合した合弁会社を2010年4月に設立すると発表した(写真1)。統合後の新会社の名称は「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ」。資本金は10億円でスタートし,NECが66%,カシオが17.34%,日立が16.66%を出資する。統合による新会社の国内シェアは19%で,シャープに次ぐ国内2位の規模となる。統合によるシナジー効果を生かし,新会社発足後できるだけ早期に国内1位のシェアを目指す。さらに海外販売比率を高めることで,2008年度の合計出荷実績である890万台を,2012年度には1200万台まで拡大する目標だ。

 新会社は,NECの携帯電話端末事業部門であるモバイルターミナル事業本部を分割し,カシオと日立の携帯電話端末事業会社であるカシオ日立モバイルコミュニケーションズと合併する形で発足する。事業統合に至った経緯について,NECで携帯電話事業を担当する大武章人取締役執行役員専務(写真1の左から二人目)は,「国内市場がほぼ半減したため,生き残りをかけた合従連衝は不可欠。一方,海外市場は今後,3GとLTEが拡大見込みで日本のベンダーにもう一度チャンスがある。その中で,統合効果を出しやすい会社同士で事業統合に至った」と説明する。

 大武専務は,NECとカシオ日立の2社について「事業補完が得られるベストパートナー」と強調する(写真2)。NECはW-CDMAを中心に,現在は国内市場に注力。NTTドコモとソフトバンクモバイルに端末を納入している。カシオ日立は,CDMA2000を中心に国内ではKDDIとソフトバンクモバイルに端末を納入。北米と韓国でも端末事業を展開している。機能面ではNECは薄型化や省エネ技術を得意とし,カシオ日立はカメラや映像関連,防水・耐衝撃技術に強い。「NECとカシオ日立は,マーケットと技術を互いに補完できる関係」(大武専務)とする。

 両社の事業統合は,「2007年から2008年にかけて国内市場が落ち込んだ時に,どちらともなく話が出た」(大武専務)。今後のさらなる国内携帯端末会社の統合については,「検討する価値はある。単に規模の拡大ではなくシナジー効果が出るのかがポイント。まだ具体的な話はない」(同)とした。新会社発足後のブランドについては,当面は既存のNEC,カシオ,日立ブランドを生かす考えだ。

価格ではなく技術をベースに海外事業を展開

 新会社は,まずは統合による事業規模拡大によって国内でリーディング・ポジションを確保しながら,海外市場で事業成長を図る計画。2008年度時点で全出荷台数の15~20%を占める海外比率を,2012年度には50%弱まで伸ばす考えだ。2012年度の目標である1200万台の出荷台数のうち,500万台が海外販売となる。

 ただ全世界で年間1億台以上の端末を出荷するフィンランドのノキアや韓国のサムスン電子などの海外の大手携帯端末ベンダーと比べると,規模が一けた以上違う。このような状況下での海外展開について,「価格競争では規模の違う海外の大手ベンダーに勝てない。例えば1端末50万台程度の出荷でビジネスが成り立つような,技術的な優位性を持った商品を出すことが新会社の役目」(大武専務)と説明する。

 NECはかつて中国市場に進出したものの現在は撤退。海外市場の進出に一度失敗している。大武専務は「3Gの普及を先取りし過ぎて海外展開していたり,販売店の扱いに慣れていなかった反省がある。カシオ日立は,米ベライゾン・ワイヤレスに対してベライゾン・ブランドで出荷し,3年間で3倍も出荷台数を伸ばしている。このようなやり方を学び,海外事業を拡大していきたい」と答えた。

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