「ダボス会議」の開催で知られる世界経済フォーラムは2009年9月4日,日本オフィスの新設を発表した。東京に置かれる日本オフィスは,本部のスイス・ジュネーブ,米国ニューヨーク,中国の北京に続く4番目の拠点となる。

 世界経済フォーラムは,世界の約1000社の企業が参加する非営利の国際機関で,「ダボス会議」は年次総会の通称である。経営者だけでなく政治指導者,大学関係者などが多数参加する。ビル・ゲイツ氏やクレイグ・バレット氏をはじめ,各国のICT企業の代表も多数参加し,ICTに関する諸課題を共有する場になっている。

 同フォーラムの日本オフィス新設に合わせ,9月4日には「Japan Meeting」が開催された。会合には国連難民高等弁務官を務めたJICA(国際協力機構)理事長の緒方貞子氏や民主党の鳩山由紀夫党首が参加したという。

 翌9月5日には,一般公開の講演会「ダボス・エクスペリエンス in 東京」を開催した。講師は,著書「世界級キャリアの作り方」などで知られる一橋大学大学院国際企業戦略研究科の石倉洋子教授。同教授は,世界経済フォーラム日本統括の土屋聡氏と対談する形で,同フォーラムの概要を紹介した。

 続いて石倉教授は,今年のダボス会議で行われた米国の元副大統領のアル・ゴア氏と,ロックバンドU2のボーカルで慈善活動家でもあるボノ氏の対談を,ビデオ映像も交えて紹介。こうした対談では「あえて結論を求めない」,「プレゼン資料を用いない」,「世界の多様性を実感できる場だ」など,同会議の雰囲気を伝えた。さらに「世界経済フォーラムのような国際舞台では,自分が何かを持っていないといけない」と来場者に語った。

 講演会には,緒方氏が特別ゲストとして登場した。緒方氏は「世界経済フォーラムは,いつも先を見ている」とその活動姿勢を紹介すると共に,「日本はダボスから遠い」と評した。これは,距離だけでなく,情報共有の面でも“距離がある”という指摘である。日本からは見えにくい世界の諸課題を共有する“一体感”の重要性を語ったものだ。

 講演会には,竹中平蔵氏も登場,「サマーダボス」と呼ばれる会合(2009年は9月に中国・大連で開催)のホスト国を務める中国が,開催招致に力を入れる理由や経緯を紹介した。さらに竹中氏は,世界経済フォーラムが「ソフトパワーの戦いの場」であることや,「組織の肩書きでなく“個人の力”が試される場」であること,「一人の力でも世界を変えられることを体現していること」などを説明した。