左からモデレーターを務めたアジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏、パネリストでブログウォッチャーの代表取締役社長の羽野仁彦氏、ライブドアの執行役員メディア事業部長の田端信太郎氏、サイバーエージェントのアメーバ事業本部ゼネラルマネージャーの小池政秀氏
左からモデレーターを務めたアジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏、パネリストでブログウォッチャーの代表取締役社長の羽野仁彦氏、ライブドアの執行役員メディア事業部長の田端信太郎氏、サイバーエージェントのアメーバ事業本部ゼネラルマネージャーの小池政秀氏
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 マーケティングとITの専門イベント「ad:tech Tokyo」では2009年9月2日、ブログマーケティング支援企業の事業責任者らを集めたパネルディスカッション「ブログマネタイジング」が行われた。パネリストとして、ブログウォッチャー(東京都中央区)代表取締役社長の羽野仁彦氏、ライブドア(東京都新宿区)執行役員メディア事業部長の田端信太郎氏、サイバーエージェントアメーバ事業本部ゼネラルマネージャーの小池政秀氏が登壇。アジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏がモデレーターを務め、企業のマーケティングにおけるブログ活用の実態や問題点について議論した。

 ディスカッションの中では各社が成功事例を披露した。ライブドアの田端氏は、三菱自動車工業のスポーツカー「ランサーエボリューションX」の事例を紹介。千葉県と大阪府でブロガー対象の試乗会を企画したところ、ヘルメットと手袋は持参、交通費は参加者負担などの条件にもかかわらず各10人が参加。動画を撮影してアップする人もいた。優れた記事にはライブドアのポータルサイトから誘導して、効果を高めたと説明した。

 サイバーエージェントの小池氏は、花王のヘアケア製品「エッセンシャル」で著名人ブロガーを活用した事例を紹介した。サイバーエージェントのブログサービス「Ameba」では、約6000人の芸能人・著名人がブログを書いており、それらの合計PV(ページビュー)は月36億~40億になるという。

 エッセンシャルの事例では、その中から女性ブロガーをキャスティングして、製品を使用した感想を書いてもらった。その結果、彼女らのブログ記事を通じてファンにアピールできただけでなく、その記事を花王のサイトやアメーバ内のタイアップページでコンテンツとして使ったり、Yahoo! JAPANなどに配信する広告のクリエーティブに使ったりできたという。

 ブログウォッチャーは、ブロガーに記事執筆を促すほかの2社と異なり、既に書かれたブログ記事を活用してプロモーションに役立てている。羽野氏は、江崎グリコのコーヒーゼリー飲料「ドロリッチ」の事例を紹介。同製品について書かれたブログ記事をブログウォッチャーが収集し、ドロリッチのサイトで一覧できるようにした。製品サイトでブログ記事を一覧にすることは、「クチコミを見せることで最後の一押しをする販売促進」(羽野氏)になるという。

広告主とブロガーの折り合いには苦労

 ディスカッションの後半では、徳力氏が「米国では、やらせや『スポンサードカンバセーション』に対する規制が出てきている。日本ではルールがないが、トラブルを起こす企業もある。そういった問題はどうクリアすべきか」と問題提起した。

 ライブドアの田端氏は、「広告主がよく書いてほしいと思うのは当たり前。ブロガーの立場だとブログは自己表現の場で思った通り書くのは当然。この2つの折り合いについては試行錯誤している」と心境を明かした。日本ヒューレット・パッカードのタブレットPCをモニター企画として提供した事例は、提供した商品が高額なことから「グレーゾーン」(田端氏)としながら、同企画でビジネス向けと思われていたタブレットPCを子供のひらがな学習に活用したモニターがいたことを紹介した。

 田端氏は、ブログマーケティングでは「完全にコントロールするのはあきらめて身を委ねること」が大事と語り、「(ブロガーとの)会話は台本は無く予測できないもの。そこで新しい使い方が発見される」と、活用のポイントを説明した。

 サイバーエージェントの小池氏は、一般ブロガー向けにはブログに書くネタ、情報を提供する「ブログネタ」というサービスを通じて広告主の情報も提供。書くことを強制せず、書いた人への謝礼は無いが、1ネタ当たり平均で5000~6000件、多いときは2万件のブログ記事が書かれると説明した。

 一方、芸能人ブログでの記事掲載を支援するサービス「記事マッチ」ではガイドラインを設けて、芸能人自身が気に入らないと書かないこと、書く内容はコントロールできないことなどを、広告主に説明しているという。

 最近、同ガイドラインに違反したような芸能人ブログの記事がネット上で話題になったが、「別の代理店が直接タレントに依頼した」(小池氏)ことが原因で、「薬事法の基準に沿っていなかったことと、広告の明示がないPPP(ペイ・パー・ポスト)になってしまったこと」が問題だったと明かした。

 ライブドアの田端氏は芸能人ブログの活用について、「有名人のブログではスポンサードと表示していればいいと思う」と理解を示したが、「本来的なブログマーケティングのポテンシャルの面からは、タレントがスポンサーなどの製品をほめる大人の事情が臭うことに対してユーザーがどう思うか。長い目で見たら効果は徐々に無くなっていくと思う」と指摘した。