内閣官房 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は2009年8月25日,第1回「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」を開催,「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行などの重点点検」に関するパブリックコメント募集に寄せられた意見208件を公開した。

 「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」は,政府が策定した「i-Japan戦略2015」で定められた「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行,サービスの仕組みそのもののあり方や運用などを国民にとって利益となる形で抜本的に見直す」ための「規制・制度・慣行などの『重点点検』」を実施するために設置された,有識者による会議。慶應義塾大学 総合政策学部長 國領二郎氏らが委員を務めている。

 IT戦略本部では,調査会設置に先立ち,2009年7月10日から8月6日まで「デジタル技術・情報の利活用を阻む規制・制度・慣行」に関するパブリックコメントを募集していた。

 パブリックコメントは個人38人から133件,団体27組織から75件,合計208件が寄せられた。提出者には社団法人 日本経済団体連合会(経団連),社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA),社団法人 全国地方銀行協会といった企業団体,ヤフーや楽天,富士通,野村総合研究所といった企業の名前もある。意見の内容は行政,電子申請,医療・健康,育児,個人認証,電子化の推進,選挙,個人情報保護,プライバシー保護,コンテンツ,違法有害情報,産業など多岐にわたっている。

 経団連が提出者となっている意見は「一般用医薬品のインターネットを含む通信販売規制の見直し」,「電子帳簿保存の承認要件の見直し」,「公的個人認証サービスの署名検証者の民間事業者への拡大」,「労働条件の明示の方法にかかる電子メールなどの解禁」,「UWB無線システム規制の緩和」,「モバイルWiMAX移動局の技術条件の見直し」など。電子情報技術産業協会(JEITA)が提出者となっている意見は「個人データに関する事故が発生した場合における,本人への通知,公表,および主務大臣への報告の義務」,「個人情報保護法に定められる『個人情報』定義の明記」,「特定健診の保健指導におけるTV会議を活用した遠隔面談の実現,および支援ポイントの加算」,「レセプト情報の2次利用(分析など)を考慮した電子フォーマットの変更に関する要望」などに関するもの。

 富士通が提出者となっているのは「実効的な電子行政を実現する基盤となる共通コードの実現」,「遠隔医療の普及・促進に向けた規制緩和」などに関する要望である。野村総合研究所は北海道大学などと連名で「匿名化された患者の医療情報の利活用に関する規制の緩和」を望む意見を提出している。

 ヤフーが提出者となっているのは「医薬品(市販薬)の情報提供における対面原則」,「刑事上の責任に対する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)の不適用」,「コンテンツの流通・促進のための法制度の未整備」などの意見。楽天が提出者となっているのは「一般用医薬品のインターネットを含む通信販売規制」,「民間企業間におけるネット販売の制限・禁止の慣行(安売りを理由としたネット販売の禁止)」,「選挙におけるITの利活用の制限」などである。

 また「電子申請手続きの効率化」,「著作権法への一般フェアユース条項導入」,「児童ポルノ」,「青少年を対象にしたコンテンツ・フィルタリング」,「デジタル放送のコピー制限およびB-CAS」などに関する意見も多数寄せられている。

 「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」は今後,対象の絞り込み,関係府省などへのヒアリングを経て提言をまとめ,関係府省に検討を依頼。2010年春に各府省で検討した結果を公表する予定である。

◎関連リンク
デジタル利活用のための重点点検専門調査会議事次第(内閣官房 IT戦略本部)
パブリック・コメント結果概要[PDF](内閣官房 IT戦略本部)
パブリック・コメント結果[PDF](内閣官房 IT戦略本部)