セキュリティ&プログラミングキャンプ2009での講義の模様
セキュリティ&プログラミングキャンプ2009での講義の模様
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プログラミング・コース主査のよしおかひろたか氏
プログラミング・コース主査のよしおかひろたか氏
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Ruby組講師 笹田耕一氏
Ruby組講師 笹田耕一氏
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学生がキャンプで作り上げたOS
学生がキャンプで作り上げたOS
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 「学生が開発したコードが,Ruby本体に取り込まれ,Linuxカーネル・メーリング・リストにも投稿された」(プログラミングコース 主査 よしおかひろたか氏)---。経済産業省(経産省)などは2009年8月12日から16日まで,学生が合宿形式でIT技術を学ぶ「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009」を開催した。

 「セキュリティ&プログラミングキャンプ2009」は,経産省が独立行政法人 情報処理推進機構(IPA),財団法人 日本情報処理開発協会(JIPDEC),NPO 日本ネットワークセキュリティ協会と共催しているイベント。2004年に「セキュリティキャンプ」として始まり,2008年からプログラミングコースを新設し,「セキュリティ&プログラミングキャンプ」になった。今年は,書類選考で選ばれた中学生から大学生までの61名が参加した。

 このキャンプの大きな特徴は,講師全員が第一線で活躍する著名な技術者であること。例えばプログラミングコースRuby組の講師は,Ruby 1.9のエンジン部分を開発した東京大学の笹田耕一氏と,Ruby 1.9のリリース・マネージャである園田裕貴(Yugui)氏,西尾泰和氏らが務める。Linuxカーネル組の講師はLinuxのIPv6を中心となって開発した慶應義塾大学の吉藤英明氏や,Linuxのメモリー管理機構改良などで知られる富士通の小崎資広氏らである。

 セキュリティ・コースの講師もサイバー大学の園田道夫氏を主査にJi2の伊原秀明氏,セキュリティ・プロフェッショナルズ・ネットワークの吉田英二氏,NTTデータ先端技術の根津研介氏,NTTデータの宮本久仁男氏,フォティーンフォティ技術研究所の村上純一氏,エネルギアコミュニケーションズの濱本常義氏,ネットエージェントのはせがわようすけ氏,テックスタイルの岡田良太郎氏など著名な技術者がそろっている。セキュリティ&プログラミングキャンプ2009では,こうしたオープンソース・ソフトウエア開発やセキュリティ技術の最前線に立つ当事者が,泊り込みで学生を鍛えた。

Rubyを最大5倍高速に

 その成果が冒頭で紹介したRuby本体の改良などである。開発されたコードは,ベンチマークによってはRubyの性能を約5倍向上させるもの。すでに笹田氏の手により,8月15日付けでRuby本体に取り込まれている(Rubyソースコード管理システムの変更履歴)。作成した林拓人氏は2008年のU-20プログラミング・コンテストで経済産業大臣表彰を受賞した高校生である(関連記事)。また中学生の参加者も自らのアイディアに基づいてRubyの高速化に取り組んだ。ほかにもスレッドのスタック・サイズをオプションで指定できるようにする機能など「本体に取り込みたい機能が開発された」(Yugui氏)。

 また同じ中学生の参加者の中で,ひとりはLinuxカーネルのtask statusファイルにuser-timeとsystem-timeが含まれていない問題を修正し,またもうひとりがNFSのロックのバグを修正した。それらのパッチはすでにLinuxカーネル・コミュニティに提案され,Linuxカーネル本体への統合を目指している(Linuxカーネル・メーリング・リストへの投稿[1]投稿[2]))。

 「OSを作ろう」組では,軽量オープンソースOS OSASKの作者であり,「30日でできる!OS自作入門」の筆者でもある川合秀実氏やサイボウズ・ラボの竹迫良範氏,天野仁史氏らが講師となり,参加者がそれぞれのOSを自作した。参加者はキャンプ前に予習をして望み,進ちょくの早い学生は実際のパソコン上でGUIが動くところまで開発を進めていた。

 セキュリティ・コースでは,Webアプリケーション・セキュリティやセキュアなサーバー構築,ネットワーク技術,マルウエアや通信パケットのバイナリ・レベルでの解析といったクラスに分かれてセキュリティ技術を実習。また,USBメモリーを媒介に感染するウイルスConfickerへの対策を,グループごとに自分たちで考え発表する実習もあった。

「学び続けていれば世界を変えるチャンスが来る」

セキュリティ&プログラミングキャンプ2009の特別講義
セキュリティ&プログラミングキャンプ2009の特別講義
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横浜地方検察庁 検事 大橋充直氏
横浜地方検察庁 検事 大橋充直氏
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,はてな 執行役員 最高技術責任者(CTO) 伊藤直也氏
はてな 執行役員 最高技術責任者(CTO) 伊藤直也氏
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 特別講義として,“ハッカー検事”として知られる横浜地方検察庁 検事 大橋充直氏と,はてな 執行役員 最高技術責任者 伊藤直也氏による講演も行われた。

 大橋氏は「このキャンプのカリキュラムはトップレベル。君たちは日本の未来を担っている」と激励。「技術を悪用すると将来を棒に振る。悪用した人間は警察のハイテク捜査班が必ず捕まえる。国外サーバーとVPN,漫画喫茶や野良アクセス・ポイントを経由して隠ぺいを図った不正アクセスでも犯人を突き止めた。至福のインフラであるインターネットと君たちの優れた技術を正しい目的に使おう」と呼びかけた。

 伊藤氏は,はてなブックマーク開発の経緯を紹介した。伊藤氏はニフティでブログ・サービスを立ち上げたが,このときのソフトウエアには米Six Apartのものを採用していた。同様のソフトを自分の手で作りたいと考えた伊藤氏はベンチャー企業のはてなに転職,はてなブックマークを開発した。ヒットしたがために過負荷によるトラブルにも見舞われたが,技術を学び直し,サーバー・インフラを再構築。はてなブックマークも作り直し,2008年末に「はてなブックマーク2」としてリリース。登録会員30万人,月間450万ユニーク・ユーザーがアクセスするサービスとなった。

 伊藤氏はキャンプに集まった若者たちに,「プログラムは世界を変える。継続して学び続けていれば,これを自分が作った,と胸を張って言える日がきっと来る」と呼びかけた。

■変更履歴
第2段落で主催団体にNPO 日本ネットワークセキュリティ協会を追記しました。第3段落で「Yigui氏」となっていましたが「園田裕貴(Yugui)氏」に訂正いたします。また第4段落で紹介したサイボウズ・ラボの竹迫良範氏はセキュリティコースではなく,プログラミングコース「OSを作ろう」組の講師であり,第7段落で改めて紹介いたしました。以上お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。 [2009/08/17 19:22]