国立情報学研究所、日本ユニシス、凸版印刷は2009年7月30日、ITを活用して二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する実証実験を発表した。物流経路を最適化してCO2排出量を削減したり、CO2排出枠付き商品の流通・管理システムを構築したりする。2012年3月末まで実験を実施し、商用化可能なモデルも検討していく。実証実験は総務省の研究開発プロジェクトとして実施する。

 物流については、ソフトウエアのコンパイラ技術を経路探索に応用する。具体的には、トラックの配送経路をプログラムとして記述する言語を開発する。プログラムを構文解析すると、工場などの拠点をノード、拠点間の経路をリンクする集配条件を木構造で表現される。機械語に置き換える際に最適化するコンパイラの仕組みを利用して、CO2排出量を最小化する最適経路を推定する。

 この仕組みを使うと、複数の運送会社が相乗りする共同物流での最適経路も導出できる。「業界団体から現在のデータをもらってシミュレーションしたところ、経路の効率化で10%、共同物流まで導入すれば30%のCO2削減が可能と推測できた」(国立情報学研究所の佐藤一郎教授)。

 CO2排出枠取引では商品にICタグを付けて流通させる。ICタグに排出枠情報をひも付けし、商品の購入者が排出枠を受け取れるようにする。例えばBtoB取引において、より排出枠の多い部品を購入するなどの用途に役立てる。「将来的に排出枠取引が現実化した際に、あわてて仕組みを考えないでいいように先行して実験する」(佐藤教授)。

 実験では国立情報学研究所が物流経路の最適化アプリケーションをSaaS形式で提供する。凸版印刷は紙製飲料缶の取引で、物流経路の最適化や排出枠取引の仕組みの導入を実験する。日本ユニシスは排出枠取引を管理するシステムを構築し、信託銀行や政府と連携しながら実証実験を行う。