写真●日本IBM システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐々木言氏
写真●日本IBM システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐々木言氏
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 「エンジニアは仮想化について,サーバー,ストレージ,そしてネットワークについての『分離』と『連携』を総合的に考える必要がある」。2009年7月29日開催の「仮想化フォーラム2009 Summer」に登壇した日本IBM システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐々木言氏(写真)は,サーバー仮想化ソフトの機能とハードウエアの仮想化機能を柔軟に組み合わせるスキルの重要性をこう指摘する。

 仮想化は物理的なハードウエアを仮想化ソフトで「分離」する側面と,それらをソフトウエアで論理的に結びつける「連携」する側面がある。ある金融業の事例では,OS領域の仮想マシン・イメージのバックアップをVMwareの機能に任せ,データ用ストレージのバックアップはストレージ装置のスナップショット機能を利用した。物理デバイスをゲストOSに直接割り当てる形になる。「この構成だとサーバー側のCPU負荷が生じない。ストレージ装置の機能をゲストOSから直接制御する点で,仮想化による分離の世界を飛び越えたハードウエアとの連携が起きている」と佐々木氏は見る。

 境界点はハードウエアとサーバー仮想化ソフトだけでなく,「エンジニアのスキル領域の違いという要素もある」と佐々木氏は強調する。「エンジニアのスキルはネットワーク,サーバー,ストレージで分かれているのが普通。しかしサーバーやストレージの仮想化は,ネットワークの知識がなければ立ち行かない」(佐々木氏)。サーバーならネットワーク・インタフェースのMACアドレス,ストレージならFibre ChannelやSASのWWN(World Wide Name)といった具合である。

 さらにLANを複数の仮想LANとして分離するVLANの管理も意識する必要がある。VLANごとに予備機を用意する,手動で再設定する,フェイル・オーバー元のVLANに自動設定する,といった運用管理を,サーバー仮想化ソフトの仮想ネットワークを熟知したうえで設定する必要がある。

 この課題に対する解決策の一つは,製品の機能に任せること。ストレージについては,多くのSANストレージは「NPIV(N_Port ID Virtualization)と呼ぶポートの仮想化機能を備えている。またIBMを含めて,MACアドレスとWWNの割り当てを一括管理する管理モジュールを用意している」(佐々木氏)。またVLANについては,LANスイッチが仮想MACアドレスを持ち,サーバー仮想化ソフトの仮想ネットワークに対して透過的にネットワーク設定を自動化する機能で,責任境界点を分離する。

 佐々木氏がサーバー,ストレージ,ネットワークにおける「究極の連携」として最後に挙げたのが,遠隔地のデータセンターを仮想化・連携させるディザスタリカバリ環境。「エンジニアのスキルエリアが広がっている。分離と連携のポイントを見抜き,かつ上手にコントロールして組み合わせたシステムが良い仮想化システム」とし,仮想化時代に求められるエンジニアのスキルセットを例示して講演を締めくくった。