写真●ツムラの佐藤秀男情報技術部部長
写真●ツムラの佐藤秀男情報技術部部長
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 「当社が構築した仮想サーバー環境は『ぬか床』のようなもの。ここに既存システムをつけ込めば、10年間はシステム環境を腐らせずに利用し続けられる。5年に1度は新しい技術で、ぬか床をかき回してやるつもりだ」--。2009年7月29日に開催した「仮想化フォーラム2009 Summer」の基調講演で、社内の全アプリケーションサーバーを仮想化したツムラの佐藤秀男情報技術部部長(写真)が「仮想化の極意」を語った。

 ツムラは2008年に、社内の全Web/アプリケーションサーバーを仮想サーバー環境に移行済み(関連記事:10年後も使い続けられるインフラ、仮想化でDB統合にも踏み込む)。「ヴイエムウエアの仮想化ソフトは2004年から使っていたが、サーバーを統合してもすぐに増えるといういたちごっこが続いていた。そこで思い切って137台あったWeb/アプリケーションサーバーを仮想化を使って12台のサーバーに統合した」(佐藤氏)。

 効果は絶大だった。サーバー台数を9割削減することによって、アウトソーシング事業者に支払う保守費用も8割減少した。ツムラでは今年、38台のデータベースサーバーを8台のサーバーに統合するプロジェクトも進めている。「当社が使用するデータベースはほとんどが『Oracle Database』なので、プロセッサライセンスの費用を大幅に削減できる」(同)と見込む。ツムラがサーバー環境に使用する予算は、2008年を100とすると09年は84、2013年には51にまで少なくなる。「浮いた予算で、戦略的なIT投資が可能になる」と佐藤氏は見込む。

 佐藤氏が挙げる仮想化のメリットは、コスト削減だけではない。「当社が10年前に開発したWebシステムは、機能がほとんど陳腐化していない。Windows Server 2003上で稼働するシステムなら、仮想サーバーを運用し続けることであと10年は使用できる」と見込む。5年後には仮想サーバーに使用するサーバーの保守が切れるが「その時になったら、サーバーハードウエアと仮想化ソフトウエアの両方を新しいものに切り替える。こうやって『ぬか床』をかき回してやることで、10年経っても腐らない環境を維持できる」(同)という。

 データベースサーバーの統合後には、アウトソーシング先のデータセンターとは別の場所で、災害時用の予備サイトを運用するディザスタ・リカバリ(災害復旧、DR)にも取り組む予定だ。佐藤氏は「仮想化でコストが浮いたお陰で、不可能だと思っていたDRへの投資ができるようになった」と語る。今後も「製造と営業支援というコア業務にかかわるシステムは自前での開発を貫き、サーバー統合で浮いた予算をつぎ込む。それ以外のシステムはSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やASP、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を利用すればいい」という方針で、システム投資に取り組む予定だ。