情報通信行政・郵政行政審議会の電気通信事業部会は2009年7月28日,接続委員会の第5回会合を開催した。会合では2009年5月に諮問された,NTT東西地域会社のNGNにIPv6プロトコルを使ってインターネット接続するための約款変更についての報告書案に関して,6月と7月に実施した意見募集と再意見募集の内容を踏まえて議論が行われ,約款変更を認可する方針が示された。

 NGNのIPv6接続に向けた約款変更については,「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の二つの接続方式の提供を目指すNTT東西側と,ネイティブ方式によるNTTグループの市場影響力拡大を懸念するISP(インターネット・サービス・プロバイダー)の間で意見が対立していた。

 報告書案は,NTT東西が申請した2方式による接続を基本的に認めながらも,意見募集でISPらを中心に反対意見や懸念が集中した12項目について,「しっかり総務省がメンテナンスすること」(接続委員会の東海主査)を付帯条件として要望した。報告書案に盛り込まれた付帯条件の代表的なものは次の通りである。

・NTT東西に対し,トンネル方式に係る利用者負担の軽減などに資する取り組みを積極的に行うように努めることを要請すること。

・NTT東西に対し,トンネル方式において,ISP事業者の負担を軽減する観点から,網終端装置でIPv4接続とIPv6接続の双方が可能となる方策について検討することを要請すること。

・NTT東西に対し,今後の技術の進展状況などを踏まえつつ,ネイティブ接続事業者の最大数をできる限り増加できるように検討を行うことを要請すること。

・NTT東西に対し,ネイティブ接続事業者の選定結果の申込事業者への通知に先立ち,選定結果および当該選定が今回の申請案に規定する選定基準に基づき行われた旨を示す書類を総務省に報告することを要請すること。また,総務省においては,当該報告に基づき,選定過程の公正性・適正性の検証を行うこと。

・NTT東西に対し,ネイティブ方式における網内折返し通信に関し,違法情報については,これまでと同様,捜査機関からの要請に応じて犯罪捜査への協力などを実施するとともに,有害情報などについても,社会的要請に応じ,ネイティブ接続事業者などと連携しながら,適時適切に対応を行うように務めることを要請すること。

・総務省において,NTT東西の子会社などがネイティブ接続事業者として選定された場合には,事業者間の競争環境について十分に注視し,電気通信事業法などの規定および接続約款におけるネイティブ接続事業者の責務規定に違反するおそれがある場合には,迅速かつ厳正な対応を行うこと。

・NTT東西に対し,今後も,利害関係者であるISP事業者の理解が得られるように必要な情報を積極的に開示するとともに,システム開発などに係る事業者間協議が円滑に行われるように努めることを要請すること。

 接続委員会は今回の議論を踏まえて答申案の一部表現を修正した後,8月6日に開催する電気通信事業部会で答申する予定である。