日本音楽著作権協会(JASRAC)は2009年7月27日,「放送利用についての管理楽曲の利用許諾分野における競争を実質的に制限している」という理由で公正取引委員会から受けた排除措置命令に関する審判(第1回目,同日開催)において,「公取委の判断には重大な誤りがある」と指摘した。

 公取委が問題視したのは,JASRACが放送事業者と結ぶ「包括的利用許諾契約」である。包括的利用許諾契約で放送事業者は,前年度の放送事業収入の1.5%をJASRACに支払うことになっている。放送事業者はJASRAC以外の著作権などの管理事業者の管理楽曲を使う場合,JASRACとその管理事業者の両方に楽曲の使用料を支払わなければならず,公取委は「(JASRACの包括的利用許諾契約は)ほかの管理事業者の事業継続を困難にしかねないと判断した」としている。

 2009年7月27日の審判でJASRACは,「著作権等管理事業法に従い日本民間放送連盟(民放連)と協議をして,放送事業者の負担にならないように使用料規程を決めて,それに基づいて各放送事業者と使用料について合意した」とした。さらに「包括徴収を内容とする包括契約は世界の多くの国で音楽著作権の管理事業者が採用している。これが独占禁止法に違反するということは,そのようなグローバルスタンダードによる音楽著作権の管理方法を否定することにほかならない」と述べた。

 このほかに,「JASRACは管理事業法を遵守し,合理的な契約交渉をして合理的な料率での使用料に合意した。今回の排除措置命令は私的自治の要素を成す契約交渉の過程と結果に対する違法な介入だ」とした。さらに今回の排除措置命令で,使用料の算定において各放送事業者の利用楽曲の総数に占めるJASRACの管理楽曲の割合が使用料に反映される方法を採用することをJASRACに命じていることについて,「使用料の算定においてJASRACがどのような方法を採用すべきであるのかが明らかにされていない」「JASRACのみの行為によって履行することは不可能であるし,放送事業者の協力を得るとしても命令を履行するまでに必要な期間についての予測がつかない」としたうえで,「命令の対象ではない者の行為によって履行の可否が決まるような内容は排除措置命令として適法とはいえない」と指摘した。

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