NECのプライベート・セミナーで講演する松田氏
NECのプライベート・セミナーで講演する松田氏
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 「7月に通信事業者の新サービスが勢ぞろいした。これを使えば,ネットワークのコストを30~40%削減できる可能性が高い」と言うのは,NEC企業ネットワークソリューション事業本部 技術主幹の松田次博氏である。

 同氏は,2009年7月24日にNECが開催したプライベート・セミナーで“革新する企業ネットワーク”をテーマに講演した。その中で,最近注目しているネットワーク・サービスとして,固定通信系ではKDDIの「Wide Area Virtual Switch」とNTTコミュニケーションズの「バーストイーサアクセス」,無線通信系では,携帯電話事業者各社が提供するワイヤレス・ブロードバンド・サービスを取り上げた。固定系の二つのサービスは,トラフィックが急増した場合には,契約帯域を超え,回線の物理速度の上限まで利用できるサービスである。

 松田氏は,過去に『日経コミュニケーション』で取り上げられた,規模の異なるユーザー企業を“仮想顧客”として取り上げ,これら新サービスを活用した場合の試算結果を示した。

 例えば,全国に1000拠点を持つ流通業者の場合,重要拠点とデータ・センター間にKDDIとNTTコミュニケーションズの新サービスを導入,全国に多数ある小規模拠点のバックアップ回線をワイヤレス・ブロードバンドにすると想定する。この場合には,もともと1カ月あたり1億100万円かかっていたネットワーク・コストは,6500万円で済むようになるという。

 新ネットワーク導入後のネットワーク・コストには,設計・工事料や機器利用料が含まれている。つまり,初期コストがまったくかからない提案ということになる。

 これとは別に,50拠点の導入モデルも示した。この場合には,月額1118万円のネットワーク・コストは462万円になるという結果が得られた。

 1000拠点の導入ケースでは,さらに別の手法を組み合わせることで,さらに500万円の削減が可能だという。この秘策については,「知りたい方は私を呼んでほしい」として,講演の場では明かさなかった。

 講演ではこのほかに,顧客の間で話題になっているメール・システムの見直しや,NECが得意とするPBXにも触れた。

 メール・システムは,一部の有名企業が米グーグルの有償版Gmailを導入したことが報じられたことをきっかけに「隠れた売れ筋」になっているという。マイクロソフトのExchangeからGmailへの切り替えにより,5年間の総費用が20億円から9億円になると見積もったという『日経コンピュータ』の記事をきっかけに,各社で見直しが始まったのだ。松田氏は「NECのStarOfficeを使う“プライベート・クラウド”なら,有償版Gmailよりもさらに下げられる」とした。同氏が示した見積もりでは7億5000万円で済むという。

 PBXについては,老朽化したPBXを更新する際に,全面的にIP電話に代えるのではなく,既存の電話機を残しつつIP電話と共存させる,低コストかつ柔軟な提案ができるとした。

 松田氏は,2009年4月にNTTデータからNECに移籍したばかり。会場に記者の姿を見つけた松田氏は,「“差し障りのある”話をしないと注意をひかないし,記事にしてもらえない」と冒頭であいさつ。「NECは新技術に関する膨大な情報や技術者を持っているが,活用できていない」,「社内ではPBXの話ばかりしている」といった,入社後のNECに対する率直な印象を語るなど,歯に衣着せぬ“松田節”が健在であることを示した。会場には,NEC関係者も多数いたらしく,これらの指摘は笑いを誘っていた。