匠Lab代表取締役社長でオブジェクト指向やモデリング分野の著名アーキテクトである萩本順三氏は2009年7月22日,新会社「匠Business Place」を設立したと発表した。萩本氏が匠Labと兼任する形で代表取締役社長を務め,取締役を細川努氏,チーフアーキテクトを牛尾剛氏が務めるほか,匠Labフェローを務める浅海智晴氏が協力する。細川氏,牛尾氏,浅海氏もソフトウエア開発やモデリング分野で著名なアーキテクトで,現在は独立して活動している(写真)。

写真●左から順に,牛尾剛氏,萩本順三氏,細川努氏,浅海智晴氏
写真●左から順に,牛尾剛氏,萩本順三氏,細川努氏,浅海智晴氏
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 匠Business PlaceはビジネスとITをつなげることで,企業の価値を高めるコンサルティング・サービスを提供する。要求開発やアジャイル開発の独自方法論「匠メソッド」を利用して,「企業ブランディングを含むビジネスの企画・開発にITを生かしていく」(萩本氏)。サービスの契約形態として,(1)1日あるいは月単位で教育,講演,技術指導,経営相談を提供する「コンサルティング」,(2)年間で技術指導や教育,ブランディング,キャリア相談などを提供する「フェロー」,(3)年間で企業改革やブランディング,技術指導教育,キャリア開発などを提供する「匠メソッドライセンス」の3種類を用意する。

 匠メソッドは「要求開発」「システム開発」「ビジネスアジャイル」の3つから成る。要求開発は,ビジネス要求を情報システムの要求に変換する方法論を手がける任意団体「要求開発アライアンス」が策定した「Openthology」最新版をより詳細にしたもの。システム開発は,ウォータフォール型の開発や契約に慣れた企業がアジャイル開発の考え方を取り入れるための方法論。ビジネスアジャイルは,要求開発とアジャイル開発をセットにした方法論である。匠Labが匠メソッドの管理を担当する。

 萩本氏は2008年に豆蔵から独立して匠Labを設立。顧客との活動を通じて,匠Business Placeの構想や,匠メソッドの整備を進めてきた。根底にある問題意識は,「ソフトウエア・エンジニアリングが企業のビジネスに寄与していない」というものだ。

 「もともとITの仕事はクリエイティブなものだったのに,いま必ずしもそうではない。なぜか。理由の一つは職人気質が薄れてしまったことだ。それを取り戻したい。一方で,ビジネスの価値につなげることができるエンジニアや企業を増やさないといけない」(萩本氏)。同氏の考えに細川氏,牛尾氏,浅海氏が賛同し,匠Business Placeの設立に至った。

 細川氏は「日本のエンジニアの技術レベルは世界に比べても高い。しかし,ITによって必ずしも高い価値を提供できているわけではない。ビジネスとITをつなげる方法論を活用するとともに顧客とともに人材を育成し,IT業界の“小さな巨人”を目指す」,牛尾氏は「技術や方法論がいくら優れていても,その効果を現場でフルに発揮できるまで至っていないケースが多い。それでは顧客はハッピーになれない。我々がムーブメントを起こし,業界を元気にしていきたい」,浅海氏は「ビジネスとITをつなげる上で,クラウド・コンピューティングをはじめとする新たな技術への対応も重要になる。技術的なバックボーンを確立したい」とそれぞれ意気込みを語った。

 匠Business Placeは基本方針として,「会社を大きくするのでなく,コアを濃いものにする」(萩本氏)。コミュニティの匠Netを活用して,他の“匠”と呼べる人材を組織化したり,匠を目指したい人材の育成も進めていく考えだ。