写真1●ABCホールに特設されたドーム型シアター
写真1●ABCホールに特設されたドーム型シアター
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写真2●ドーム型シアターの内部、奄美大島から皆既日食時の4K全天映像が上映された
写真2●ドーム型シアターの内部、奄美大島から皆既日食時の4K全天映像が上映された
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 シスコシステムズは2009年7月22日,皆既日食の4K全天映像(垂直方向に360度の映像)ライブ伝送実験に,通信事業者向けルーター「Cisco Carrier Routing System(CRS-1)」や10ギガビット・イーサネット(GbE)対応スイッチ「Catalyst 3560E/3750E」を提供した。

 この実験は,独立行政法人情報通信研究機構(NICT)と超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)が共同で実施したもの。NICTが運用する「研究開発テストベッドネットワーク(JGN2Plus)」を使って,同日奄美大島で撮影した皆既日食の4K全天映像を「けいはんなプラザ」(京都府精華町),「ABCホール」(大阪市),「つくばエキスポセンター」(茨城県つくば市)の3会場にライブ中継した。

4K映像とは,水平解像度3840画素,垂直解像度2160画素の映像のことで,ハイビジョン映像(水平1920×垂直1080画素)の4倍の解像度を持つ。4K全天映像のライブ伝送実験は「世界初」(奈良先端大学院大学の油谷曉氏)だという。

 CRS-1は,1つの物理システム上でルート・プロセッサー,ライン・カードなどのリソースを分離して,複数の独立したルーターとして動作させる「仮想ルーター機能」を持つ。今回の実験では,JGN2Plusの堂島アクセス・ポイント(大阪氏北区)に設置されたCRS-1上に2台の仮想ルーターを構築した。

 奄美大島から堂島までの映像伝送には,NTT西日本の「ATM135M」ネットワークを利用し,堂島から3会場への伝送にはJGN2Plusを利用する。仮想ルーターは,堂島から3会場に配信される4Kの非圧縮映像を6.5ギガビット/秒(Gbps)で高速ルーティングした。

奄美大島は曇り,残念ながら皆既日食は観測できず

 実験会場の1つ,大阪市のABCホールには,4Kの全天映像を上映するドーム型シアター(写真1,2)が特設された。午前10時45分,シアターで笠利町立佐仁小学校(奄美市)の校庭に設置されたカメラから4K全天ライブ中継が開始された。

 シアター内のドーム型スクリーンには,徐々に暗くなる空の様子が映し出された。参加者は今回の実験のリーダーである和歌山大学 尾久土正己氏による現地からのレポートを聞きながら,映像を観賞した。

 10時47分,太陽が完全に月に隠れる「皆既日食」となった。残念ながら雲が厚く,皆既日食時に太陽の周囲に現れるコロナやダイヤモンド・リングを観測することはできなかったが,空が360度見渡せるシアター内では,皆既日食時に南の空に夕焼けが出る様子,皆既日食が終わり段々と西の空から明るくなっていく様子が体験できた。