米ワシントン大学は米国時間2009年7月21日,Webブラウザから入力したテキストを指定した時間に自然消滅させる技術を用いたツール「Vanish」のプロトタイプを公開した。同大学のWebサイトから無償で入手可能。「Firefox」に対応する。

 Vanishは,大規模なPtoPネットワークを利用してデータを消去し,機密情報を保護することを目的とする。具体的には,送信するそれぞれのメッセージについて,ユーザーには決して明かさない秘密鍵を作成し,その鍵でメッセージを暗号化する。その後,鍵を多数の断片に分割し,それらの断片を世界規模のファイル共有ネットワークに接続しているコンピュータに無作為に配付する。

 ファイル共有ネットワークは,コンピュータが接続と切断を繰り返して,絶えず変化している。そのため,一定の時間が経過すると,鍵の断片を回収することは永遠に不可能となる。多くの鍵の断片が回収不可能になると,元のメッセージを解読することができなくなる。

 プロトタイプでは,ネットワークのコンピュータは8時間ごとにメモリーを解放する。データが消滅するまでの時間を8の倍数で指定できるオプションも備える。

 Vanishを利用するには,送信者と受信者の双方が同ツールをインストールしている必要がある。送信者がブラウザに入力したテキストの機密部分を選択してVanishボタンを押すと,Vanishは送信者にも分からない鍵を使って,その情報を暗号化する。受信者は機密部分を選んでVanishボタンを押し,暗号化されたテキストを復号化することができる。設定した時間が経過すると,テキストの復号化は不可能になる。

 米メディア(CNET News.com)によると,ワシントン大学の研究チームは,Vanishの使用が法的な問題に直面する可能性を認めている。たとえば一部の法令では,企業に対して電子メール・メッセージなどを長期間保存することを義務づけている。

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