内閣官房IT担当室は2009年8月6日まで,「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントを募集する。寄せられた意見はIT戦略本部が「i-Japan戦略2015」に基づき設置する「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」で検討する。

 「i-Japan戦略2015」では「デジタル社会を実現していくためには,デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行,サービスの仕組みそのもののあり方や運用などを国民にとって利益となる形で抜本的に見直すことが必要であるとの観点から,規制・制度・慣行などの『重点点検』を実施する」ことになっている。

 この重点点検を実施するための組織として有識者により構成する「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」が2009年夏に発足する。この上記専門調査会の発足に向けた準備作業の一環として「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントを募集する。

 ITの活用を阻む規制・制度・慣行については,2009年6月30日に開催された「第9回IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」でも議論されており,以下のような問題が挙げられている。

・税額通知書
 自治体から各企業に対して紙媒体で送付されており,企業はそれを仕分けて各従業員に配布しているため負担が大きい。

・高度に暗号化されたパソコンなどの紛失時の対応
 個人情報が保存されたパソコンを紛失した場合,情報漏洩として本人に通知しなければならないが,高度な暗号化などの安全管理措置を講じている場合は,紛失したとしても本人への通知は必要としないことを明確にすることで,テレワークの推進などに寄与できる。

・匿名化された個人の情報の活用
 民間事業者から見て,個人情報保護法が適用される範囲の判断がつきにくいため,匿名化された携帯電話のアクセス情報,位置情報などの情報が十分に活用できていない。個人情報保護法上の解釈を明確化することで,匿名化された情報等が活用できるようになり,クリエイティブな新市場の創出の環境整備に寄与できる。

・雇用保険被保険者離職証明書
 2011年1月に予定されている企業-職業安定所間の「離職証明書を伴う雇用保険被保険者資格喪失届のオンライン申請」で,離職者の電子署名が必要となった場合,実質的には十分機能しない可能性が懸念される。電子署名なしで,オンライン申請できるようにすることで円滑に運用できる。

・引越し時の各種行政手続き
 引越しをした場合,前居住時で申請済みの行政サービスについても,改めて手続きを行わなければならない。自治体間でデータ連携をすることによって再手続きが不要になる。

・受発注書の電子化
 受発注書などの電子保存が認められているにもかかわらず,一方で,国税関係帳簿書類としての電子保存が進まないため,実際に運用されている例が少ない。電子帳簿保存法に基づく契約関連文書などの電子化を進めることにより,本制度の活用が期待できる。

 「第9回IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」ではこのほか,「全国規模での健康情報の分析・活用」「遠隔医療」「地方単独医療費助成事業(地方公費)」「政府統計全般」「国勢調査」「自動車関連情報の参照」「既存住宅市場の活性化」の計13件が検討項目として挙げられた。

 募集期限は2009年8月6日17時。詳細は首相官邸のホームページに掲載されている。

◎関連リンク
「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントの募集について(内閣官房IT担当室)