写真1●診療情報が時系列に沿ってアイコンとして表示される
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写真2●JPEG画像に圧縮して再現する機能を備える
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 「どの医療施設が連携しているか患者も医師も考えることなく、地域医療連携を実現できる仕組みだ」。NECの担当者は2009年7月15日から開催中の「国際モダンホスピタルショウ2009」で、地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」の特徴をこう説明した。ID-Linkは総合病院や近所の内科、皮膚科クリニックなど複数の医療施設が発行した患者IDを、患者の同意を得て患者固有の一つのIDにひも付ける仕組みだ。ある医療施設で患者IDを入力すると、患者固有IDにひも付く複数の医療施設の診療情報を呼び出せる。

 医療施設間で共有できる診療情報としては、処方薬、注射、検査、画像などがある。ID-Linkを使った地域医療連携に参加する医療施設で患者IDを入力すると、これら診療情報が時系列に沿ってアイコンとして表示される(図1)。それぞれのアイコンをクリックすると詳細が表示される。医用画像専用のビューアがない場合でも、JPEG画像に圧縮して再現する機能を備える(図2)。「情報を閲覧する医療施設は、Webブラウザから閲覧する。インターネット通信が可能なパソコンさえあれば参加できる」(NEC担当者)という。

 NECとCSIは、このID-Linkと電子カルテシステム、診療情報公開用サーバーを組み合わせた「電子カルテ/地域医療連携ソリューション」を13日に発表し、提供を始めている。病院の電子カルテシステムにある診療情報を、診療情報公開用サーバーを経由して他の医療施設に公開するものだ。診療情報公開用サーバーはID-Linkから要求された患者IDの診療情報を取り出して提供する機能を備える。医療情報交換のための標準規格「HL7」と医用デジタル画像と通信の標準規格「DICOM」に準拠した情報をやり取りする。

 標準規格に準拠しているため、他社製の電子カルテシステムであっても連携できることが特徴だ。佐賀で実施した実証実験では富士通製電子カルテシステムの診療情報を共有した例もある。函館、佐賀、名古屋など複数地域の実証実験で、既に150施設以上の診療所が診療情報を閲覧するために参画している。

 組み合わせる電子カルテシステムとして大規模病院向け「MegaOakHR」、中~大規模向け「MI・RA・Is/EX」、小規模向け「MI・RA・Is/CT」があり、あらゆる規模の病院をカバーする。「MegaOakHR」はNEC製、「MI・RA・Is」シリーズはCSI製の電子カルテシステムだ。

 従来、地域医療ネットワークに接続するには、参画する医療施設が個別に情報公開のためのシステムを構築する必要があった。このため構築期間や費用の面で実現が難しかった。今回はID-Linkへの接続に必要なソフトウエアを搭載した診療情報公開用サーバーを提供することで、短期間で医療施設間の情報連携が可能になる。

 ID-Linkの月額使用料は、情報を閲覧する医療施設が7000円。自施設の電子カルテと接続して診療情報を外部に公開する場合、一般病床300床未満の医療施設が5万円、300床以上の医療施設が8万円。診療情報公開用サーバーは1200万円から。今後3年間で400病院、5000診療所への導入を目指す。