B-CAS見直し、「原案通り答申」も激論に――情通審総会新ccTLD「.日本」も導入へ本格始動総務相の諮問機関である情報通信審議会の総会が2009年7月10日に開催された。この中で、現行の「B-CAS」システムと並列で地上デジタル放送の新たな保護技術を導入することを正式決定し、総務相へ答申した。 新方式は「技術開示方式」と呼ばれるもの。B-CASシステムと異なり、地上デジタル放送のスクランブルを解除する鍵を、ソフトウエアまたはチップとして受信機内に埋め込む。2009年末までに新方式の規格を作成し、ライセンス発行・管理機関を準備する。新方式の具体的な導入時期は示していないが、2011年7月24日のアナログ放送停波に向け、可能な限り早期に導入するとしている。 併せて現行のB-CASシステムでは、携帯電話のSIMカードと同等サイズとした、地上デジタル放送専用の小型B-CASカードを2009年11月に導入。B-CASカードは、現状ではテレビやDVD/BDレコーダーなどの受信機に添付しているが、出荷時にB-CASカードを受信機のスロットに事前実装可能にする。 新方式の運用が始まることで、機器メーカーは地デジ受信機能の実装が低コストかつ容易にできるようになり、携帯機器やカーナビなど小型機器にも地デジ受信機能を盛り込んだり、低価格の受信機を出荷したりできる可能性がある。 既にアナログ停波まで約2年と迫っている中で、規格の策定や放送局側の送出設備の大規模改修、新方式の対応機器の開発・量産が必要となるなど、綱渡りの導入スケジュールとなる。またB-CASのシステムと、B-CASのライセンス発行・管理を担う株式会社のビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)については、現状のまま存続し新方式と並列で運用することとしており、B-CASシステムやB-CAS社に対して挙げられている課題は今後も残る可能性がある。
「B-CASへの競争原理導入」「受信確認メッセージの実装」めぐりかんかんがくがくただしこの日の総会では、B-CAS見直しはすんなり承認・答申といかず、複数の点で議論が展開された。 既存のB-CASに対する競争原理の導入について問うたのは服部武委員(上智大学 理工学部 教授)。 「B-CASのライセンス発行・管理機関を2社作るなど、同じプラットフォームの中で競争環境を作るという選択肢はなかったのか。また音楽のリッピングのような編集の自由度がユーザーになく、今のアナログ放送に比べ制限が多い。将来的に自由度を上げることが必要ではないか」と問題提起した。 これに対し、B-CAS見直しの議論を行っている「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委)で主査を務める村井純氏は、「新方式が関係者から提案され実現できる見込みが立ったことは、そうした観点からも意義があると考えている」と語り、B-CASと新方式を並列運用とすることが、競争環境を整える上で一定の効果があるとの見方を示した。また、ユーザーの自由度について村井氏は「ユーザーからはコンテンツの編集や自由度を上げていく可能性、教育分野での利用について意見がある」と認めた上で、「例えば教育分野での利用を促すことは現状の(B-CAS)システムでも可能であり、それを実現するかどうかは今後議論の余地がある」と述べるにとどめた。 デジコン委の親組織である情報通信政策部会で部会長を務める村上輝康委員は、「2011年7月24日に地デジへの移行を完了するという目標があり、新方式の導入は厳しいプレッシャーの中で行われている。B-CASへの競争原理の導入と新しい仕組みの導入という話もあったが、2011年7月24日に向けてできるだけきめ細かい対応をしていく上で、既に5000万台あるB-CASを見直すというより、新しい選択肢を導入して進めていくという方向で議論がされてきた」として理解を求めた。 高橋伸子委員(生活経済ジャーナリスト)は、新方式への受信確認メッセージの実装について村井氏と議論を繰り広げた。 高橋委員は「受信確認メッセージを入れるということがルールの中に入っているのは残念だ。今までそういうものを検討してきた大手のメーカーにはコストや時間のロスにならないが、中小や海外のメーカーにはロスになるし、消費者にとってもロスになる」と指摘。 これに対し村井氏は、「年内をめどに(新方式の)仕様を決める。本当に決まるのはその時点」とした上で、「受信確認メッセージを出すためのメカニズムを組み込むが、受信確認メッセージを実際に使うかどうかは別の場で議論すること。現行のB-CASシステムでも、地上デジタル放送で受信確認メッセージを使ったことはない。今後、地上デジタル放送でも受信確認メッセージが必要だとなったときに、新方式は表示機能がない、B-CASは表示機能があるとなると、新方式で改修の必要が出てくる。今ある技術をそのまま使えば、求められている方式に準拠する」と語り、実装の必要性を訴えた。 高橋氏はさらに「別の場で、というところが大変な問題。受信確認メッセージの検討の場は2つ3つあったが、もう終わっていると認識している。新方式の規格策定が年内となると、必然的に受信確認メッセージを実装せざるを得なくなる。検討いただきたかったし、間に合うところは議論していただきたい」とたたみかけた。 これについて、デジコン委の事務局を務める小笠原陽一氏(総務省 情報通信作品振興課長)はコメントを求められ、「受信確認メッセージを出すかどうかは検討すべきだし、プロセスは消費者に公開すべき。いずれにしても対応できるような仕組みとしておくということ」と語った。
「.日本」や「.東京」実現へ地ならし今回の総会では、このほかインターネットのドメイン管理に関する議題も掲げられた。ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が2010年初頭にも、英語以外の国別トップレベルドメイン(ccTLD)を認めることを受け、日本政府として「.日本」という名称をICANNに推薦することを決めた。このほか、「.日本」の管理運営事業者の選定プロセスや運営・監督体制、「.東京」や「.大阪」といった地域名のTLD新設のガイドラインなどを確認した。 |