2009年7月7日に開催された接続政策委員会の第7回会合において総務省は,接続料算定ルールを策定し,携帯電話事業者に適用する内容の報告書骨子案を提示した。この接続料算定ルールが適用されると,現在携帯電話事業者が設定している接続料は引き下げられる見通しである。ただし,携帯電話事業者にとっては受け取る接続料と支払う接続料の金額がともに下がることになる。接続料の引き下げが携帯電話の通話料値下げに直結するかはまだ不透明である。

 携帯電話事業者の接続料問題は,NTT東日本/西日本などの一種指定事業者,二種指定事業者であるNTTドコモとKDDI,非二種指定事業者であるソフトバンクモバイルの三すくみの対立構造となっている。

 一種指定事業者と二種指定事業者の間では,通信事業者が相互接続する場合に,互いの着信に対して請求する接続料に不均衡が生じている接続料の逆ざや問題が発生している。例えばNTT東西の電話からNTTドコモの携帯電話にかけた場合,NTT東西はNTTドコモに対して3分28.8円(会社内)の接続料を支払うのに対し,逆の場合NTTドコモはNTT東西に3分6.41円の支払いとなっている。これは接続料原価の算定ルールの違いによって生じている。一種指定事業者は接続料は総務省の認可制となっており,営業費(販売奨励金や広告宣伝費など)を接続料原価に組み入れないという前提になっている。一方,二種指定事業者は接続料は認可制ではなく届出制であるため,移動体通信事業者の判断で営業費を組み入れている。委員会の算定ルールが二種指定事業者に適用されると,接続料の差は縮まり,NTT東西が支払う接続料は引き下がるとみられる。ただし,KDDIは二種指定事業者に対する接続料算定ルールの確立は不要という立場を取っている。

 一方,一種指定事業者とソフトバンクモバイルの間にも,同じく接続料の逆ざや問題が生じている。ソフトバンクモバイルの接続料は3分36.72円(区域内)とNTT東西の接続料よりも高いためだ。ここで一種指定事業者が問題視しているのは,特にソフトバンクモバイルはNTTドコモやKDDIよりもシェアが低いために,二種指定事業者ではないことである。届出制という形で接続料原価を公開する義務が生じないため,ソフトバンクモバイルの算定方法に疑問を持っている一種指定事業者は少なくない。一種指定事業者からは,「不当に高額な接続料であるため,接続拒否事由としてほしい」「接続料原価を公開させるためにソフトバンクモバイルを二種指定事業者に指定すべき」といった意見が出ていた。委員会では,「二種指定事業者以外の事業者も,二種指定事業者と同様の算定ルールに基づき,接続料を算定することが適当」としていることから,ソフトバンクモバイルにも算定ルールが適用される見通しである。ソフトバンクモバイルの接続料は引き下げられることになると見られるが,接続料に占める営業費の割合が不明なため,どの程度引き下げられるかはまだ分からない。

 二種指定事業者とソフトバンクモバイル間も,同じく接続料の逆ざや問題が生じている。NTTドコモは算定根拠を明らかにするために,ソフトバンクモバイルなど非二種指定事業者にも算定ルールを適用するように求めていた。ソフトバンクモバイルも,公正な接続料算定ルールが確立されれば,必要な情報の開示を積極的に行う考えを示している。ただし両社の思惑は異なる。NTTドコモは算定ルールがすべての携帯電話事業者に適用されれば,接続料の格差が是正されると考えているのに対し,ソフトバンクモバイルは利用する周波数帯の違いによる設備負担額の差が明らかになり,接続料の正当性が認められると考えているからである。

 委員会では,2009年度内に接続料算定ルールを盛り込んだ「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」を規定し,「ガイドラインに基づく接続料算定は,2010年度接続料から行うことが適当ではないか」という考えを示している。