写真●シスコシステムズ テクノロジー担当 シニアディレクターの木下剛氏
写真●シスコシステムズ テクノロジー担当 シニアディレクターの木下剛氏
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 シスコシステムズは2009年7月7日,企業のグリーンITへの取り組みを支援する技術と製品群を発表した。「データセンター」,「オフィスのIT環境」,「建物全体」,「ワーク・スタイル」の4つの領域を対象に省エネを実現するIT製品やネットワーク技術,導入や運用のノウハウを提供する。

 データセンターのエネルギー消費削減のために,同社は「ネットワークの仮想化」と同社のコア・スイッチ「Cisco Nexus 5000シリーズ」を提案する。Cisco Nexus 5000シリーズは,FCoE(FibreChannel over Ethernet)技術を用いて,サーバーに搭載するネットワーク・アダプタやケーブルの数を削減する。

 「データセンターにおける消費電力の内訳は,冷却が50%,ITインフラが37%」(同社 テクノロジー担当 シニアディレクターの木下剛氏写真)。ITインフラの消費電力の内訳をみると,サーバー50%,ストレージ35%,ネットワーク15%となる。「データセンターにおけるIT機器のグリーン化では,サーバーばかりに焦点が当てられるが,ネットワーク機器が消費する電力も少なくない」(木下氏)。シスコでは,ネットワークの仮想化や統合により,データセンターの消費電力を2割から4割削減できるとしている。

 オフィスIT機器の省エネには,「EnergyWise」と呼ぶ技術を提案する。EnergyWiseは,同社のスイッチ製品「Catalyst」が備える技術で,ネットワークに接続されたIT機器の消費電力の計測や電源の遠隔制御を行う。EnergyWiseの利点を,木下氏は「イーサネットという既存のインフラ上に導入できること」と述べた。

 EnergyWiseは,一つのオフィス内だけでなく,オフィスの建物全体のエネルギー消費削減にも効果があるという。ただしオフィスの消費する電力のうち,IT機器は全体25%程度。最も大きいのは全体の58%を占める空調・冷暖房である。空調や照明の省エネのために,同社が提案するのが「コネクテッド・リアル・エステート(CRE)」と呼ぶネットワーク技術である。

 CREは,IPネットワーク上にビル管理システムを構築する技術。同社のルーターに,空調や照明の制御装置や,電力消費量の測定装置などを接続し,遠隔操作・監視を可能にするもの。人感センサーや,会議室などの設備予約システムと連動させることで,無人スペースの空調・照明OFF,夜間や休日の一斉電源OFFなどが可能になる。すでに,東京ミッドタウンや東京大学工学部が,CREを導入しているという。

 ワーク・スタイルの変革による省エネを支援するIT技術としては,固定席を持たない「フリー・アドレス」のオフィス環境を提案する。同社は,フリー・アドレスを実現する技術「Cisco Connected Workplace」を提供している。フリー・アドレスを導入した同社では,オフィス・スペースの利用率40%向上,電力消費量40%削減,電源などのケーブルの使用量54%削減などの効果があったという。