三菱総合研究所 理事長の小宮山宏氏
三菱総合研究所 理事長の小宮山宏氏
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 「環境対策や高齢化など,日本は,地球全体が将来抱えることになる問題を今抱えている。いち早く解決策を見出して,世界に示すべきだ」。2009年7月3日,東京都内で開催した「IT Japan 2009」に,三菱総合研究所(MRI)理事長の小宮山宏氏が登壇。「課題先進国日本の選択」と題して講演した。

 まず小宮山氏は,火力発電所からの硫黄酸化物排出量(発電量あたり)を国別に提示し,日本の排出量が最も少ないことを説明した。「日本は最もクリーンな火力発電をしている」(小宮山氏)。また,セメント生産のエネルギー効率が最も高いのは日本であり,「省エネのものづくりは,日本が世界をリードしている分野だ」と述べた。

 日本が環境対策や省エネの分野で進歩している理由は,「資源の少ない狭い国土に多くの人が住む国だから」(小宮山氏)。国土が狭いために,発電施設や工場と居住地が近く,工業廃棄物を削減する必要があった。また,石油や天然ガスなどのエネルギー資源がないため,エネルギー消費を減らす方向に技術が進歩した。

 「資源の少ない狭い国土に多くの人が住む」という日本の環境は,将来の地球環境の姿であると小宮山氏は考える。それゆえに,環境汚染や資源枯渇の問題を早くから経験している日本は,その解決策を世界に示すべきだという。また,日本は地域ごとに気候が多様であり四季もある。「地球の各地域の気候に合わせた環境対策や省エネ対策のモデルを作ることが可能だ」(小宮山氏)。

 さらに日本は,少子高齢化と人口減少の問題にも直面している。これも将来の地球の姿である。小宮山氏によると,日本は2006年に人口がピーク・アウトしたが,中国は2025年から2030年にかけて,インドも2040年にはピーク・アウトするという。「少子高齢化社会の問題についても,日本が世界に解決策を示せるのではないか」(小宮山氏)。