IBCSの椎木茂代表取締役社長
IBCSの椎木茂代表取締役社長
[画像のクリックで拡大表示]

 「経済危機のトンネルをいかに抜けるかも大切だが、トンネルを抜け出した後にどうするかがより大切だ」。IBMビジネスコンサルティング サービス(IBCS)の椎木茂代表取締役社長は2009年7月3日、IT Japan 2009の講演でこのように語った。

 椎木社長は「現時点では、トンネルを抜けた後の景色がどうなっているかを分かっている人はいない」と話し、「CEO(最高経営責任者)は将来の見通しが立たない状況下でビジネスをリードしなくてはならない」と続けた。

 こういった状況での経営をサポートするものとして、IBMの提唱する「Smarter Planet」を構成する4つの施策「New Intelligence」「Dynamic Infrastructure」「Smart Work」「Green & Beyond」を紹介した。特に強調したのがNew Intelligenceで、爆発的に増え続ける情報から、リアルタイムに新たな知見を生み出すためのもの。椎木社長は「見通しが立たない状況下では、リアルタイムのデータを意思決定に生かすことが必要。従来の、過去のデータから傾向を導き出して意思決定に利用する、という方法は役に立たない」と説明した。

 リアルタイムのデータを活用するためには、「グローバルに分散したデータを一つの場所、一つのデータセンターで管理することが必要」(椎木社長)。この実現を支えるのがクラウドコンピューティングとした。Smarter Planetでは、クラウドを含めた変化に強いビジネス/IT基盤全般をDynamic Infrastructureと定義している。

 Smart Workは、ビジネスのあり方を変える新しい発想をしたり、他社と協業をするためのもの。椎木社長は「ある会社にサービスの利用者から顧客情報の変更依頼が来た場合に、他の会社が保有する顧客情報も一括して更新できれば,より良い顧客サービスにつながる。そのような新しい企業連携の仕組みを検討していく」と具体例を挙げて説明した。

 4つ目のGreen & Beyondはエネルギーの最適利用や、地球環境問題への取り組みを指す。椎木社長は「CO2排出量の見える化などは他社も取り組んでいる。当社の強みは、見える化したデータを基に、その先のアクションにつなげられること」と話した。

 椎木社長は「ITの発展は、仕事に必要な時間・距離を短くし、業務効率を高めた。だが、それが人の幸せにつながったと言えるだろうか」と問いかけ、「Smarter Planetは人間を幸せにするための仕組みだ」と話した。