イー・モバイルは,理論上の受信速度を最大21Mビット/秒に高速化したHSPA+(high speed packet access plus)方式のデータ通信サービスを2009年8月上旬に開始する(関連記事)。同社はサービス開始に向けて,基地局の対応など準備を進めており,既に東京都内の一部ではHSPA+方式で通信できる状態となっている。実際にどの程度の速度が出るのか。HSPA+対応端末を使って通信速度を測定してみた。

写真1●新宿駅の南口方面でテストを実施した。テストに使用したパソコンはパナソニックのLet’s note CF-R8
写真1●新宿駅の南口方面でテストを実施した。テストに使用したパソコンはパナソニックのLet’s note CF-R8

 一部でHSPA+に対応しているとはいえ,あくまでも試験的なものであり,現状では受信できる地域が限定されている。今回は,その中でも比較的通信速度が出やすいという新宿駅南口付近で測定した(写真1)。テストの方法は,インターネット上のFTPサーバーにアクセスして,約1Mバイトの画像ファイルをダウンロードするというもの。今回は,HSPA+端末に加え,比較のために従来のイー・モバイルのHSPA端末でも同じテストを実施した。イー・モバイルの電波環境に合わせて場所を選んでいるため,単純な比較はできないが,他サービスとの速度差を見る目安としてウィルコムのXGP端末,UQコミュニケーションズのUQ WiMAX端末でも測定した。

 端末の機種はHSPA+端末が「D31HW(中国ファーウエイ・テクノロジーズ製)」,HSPA端末が「D23HW(中国ファーウエイ・テクノロジーズ製)」,XGP端末が「GX000IN(ネットインデックス製)」,UQ WiMAX端末が「UD01NA(NECアクセステクニカ製)」である。

図1●4種類の端末を使ってテストを実施した結果
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 HSPA+端末の測定結果は7.83Mビット/秒と,従来のHSPA端末の4.10ビット/秒に比べて2倍近い値となり,大幅に高速化されていることがわかる(図1上)。偶然にも,測定場所でXGPの電波は最大値を示していたが,通信速度は5.71Mビット/秒であり,このテストではHSPA+のほうが勝っていた。UQ WiMAXは電波強度が低かったために,3.85Mビット/秒にとどまった。

 イー・モバイルによると,通信を開始してからピークの速度が出るまでに若干の時間がかかるため,数10Mバイト程度の大容量データを送信するほうが速度が上がりやすいという。そこで20Mバイトのファイルを使って,同じテストを実施してみた。

 するとHSPA+では9.67Mビット/秒にまで速度が向上した(図1下)。XGPの結果は9.39Mビット/秒となり,HSPA+端末とほぼ互角だった。UQ WiMAXは7.96Mビット/秒になった。この場所ではUQ WiMAXは電波が最大ではなかったため,参考までに,電波が最大になる場所を探して測定してみると8.61Mビット/秒になった。

 図には記載していないが,HSPA+端末で50Mバイトのファイルを使って測定したところ,速度は11.54Mビット/秒になった。屋外の無線データ通信であるにもかかわらず,50Mバイトのファイルが40秒程度で送信できるのには驚きだった。

 20Mバイトのファイル送信の結果に現れたように,ピークの速度で比較すれば,ライバル関係にあるHSPA+,XPG,UQ WiMAXの3方式はほぼ互角といえる。今後は,そのような安定した高速通信で接続できるエリアがどの程度広がっていくのかという点が焦点になっていきそうだ。