写真●視認効果機能を使って,年齢や性別ごとに表示するコンテンツを切り替えるデモ。20代女性向けのコンテンツを自動表示している
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 NECは2009年7月1日,デジタル・サイネージ事業を国内外で強化し,新たにサービス型のメニューを開始すると発表した。従来はシステム・インテグレーション(SI)が必要な買取型で提供していた。新メニューによって市場開拓を進め,今後3年間で国内外で約500億円の売り上げを狙う。

 これまでのSI型では,数千万円規模の初期投資が必要だった。新たに用意したサービス型メニューでは,パネル1台(32インチ相当)当たり月額3万円から提供する。サイネージ配信基盤サービスをベースに,端末提供サービス,プロモーション/コンテンツ作成支援サービス,業種向けサービス,ネットワーク提供サービスなどを用意している。

 NECは1998年からデジタル・サイネージ事業を展開してきたが,2009年4月にグループ内に分散していた関連組織を集結。事業統括部門として一本化し,「PanelDirector」という統合ブランドを付けた。通信・メディアソリューション事業本部 岡本路夫事業本部長は,「デジタル・サイネージは,スタンドアロン型からネットワーク型を経て,視認効果を確認できる双方型,さらには運用コストを低減できるサービス化の形態へと進化している。ITとネットワークの事業を持つNECの強みを発揮できる分野」と意気込みを語る。

 同社がデジタル・サイネージ・システムの中で最も力を入れるのが視認効果機能だ。デジタル・サイネージに搭載したカメラを使い,コンテンツを見ている人の年齢や性別を判別。さらに滞留時間とディスプレイの距離から,サイネージで表示するコンテンツに対する興味の度合いも3段階で測定できる。性別は90%以上,年齢は70%以上の精度で判別可能という。

 発表会場では,デジタル・サイネージを見る人の年齢や性別によって,表示するコンテンツを切り替えるデモも披露した(写真)。

 現状のデジタル・サイネージ関連売り上げは,2008年度で20億~30億円という。同社は現在の日本のマーケット規模を500億円前後と見ており,今回のサービス強化によって市場開拓を狙う。

 世界市場ではデジタル・サイネージは欧米の導入が先行しており,日本は2~3年遅れているといわれている。同社通信・メディアソリューション事業部デジタルサイネージビジネス推進グループの大坂智之グループマネージャーは,「視認効果測定は使っていないものの,海外ではデジタル・サイネージを広告媒体として活用する事例が進んでいる。日本では有料広告媒体としての活用はまだ少ない。まずは広告用途が広がることが市場拡大のポイント」と語る。

 日本では景気悪化に伴って広告費を絞る傾向が続いているが,大坂氏は「デジタル・サイネージはマス広告よりも特定のターゲットに深くリーチできる。企業は限られた広告宣伝費をデジタル・サイネージのような分野に投入していくようになるだろう」(同)という見方を示した。

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