写真●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次 代表取締役社長
写真●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次 代表取締役社長
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 2009年7月1日に開催された「IT Japan 2009」において、セールスフォース・ドットコム代表取締役社長、米セールスフォース・ドットコム上席副社長の宇陀栄次氏(写真)は「クラウドコンピューティングが経営にもたらす変革 ---実例と今後の動向」と題した講演を行った。同社が開発に携わった多数のクラウドコンピューティングの事例を紹介するとともに、この日に本格稼働した省エネ家電販売促進策「エコポイント」制度を支える情報システムの開発にも参画していたことを明かした。

 セールスフォース・ドットコムは、クラウドコンピューティングのサービスを展開してきた先駆的な企業だ。クラウドコンピューティングとは、企業や個人がアプリケーションを購入したり、データセンターを自前で用意したりしなくても同じ機能をインターネットで調達できる仕組みである。グーグルCEO(最高経営責任者)のエリック・シュミット氏が2007年に提唱した。クラウドは「雲」を意味するが、この場合はインターネットを指す。IT(情報技術)業界のプレゼンテーションで、インターネットを雲の絵で表す習慣があるからだ。宇陀氏は2011年には市場規模17兆円に上るという観測を引き合いに出しながら、「いずれは電力のような社会インフラとしてユーザーが簡単に使えるようになっていく」とクラウドコンピューティングの将来性を語った。

 具体的な顧客事例としては、インターネットを活用した特殊ネジ設計コンサルティングが評価されて経済産業省の「中小企業IT経営力大賞」を受賞した専門商社ツルガ(大阪府東大阪市)や、半年の開発期間で顧客管理システムの稼動にこぎつけた日本郵政グループ、セールスフォースのクラウド・プラットフォームを採用したローソンなどを挙げた。バラク・オバマ米国大統領のWebサイトなどの海外事例についても触れた。

 これらの事例は「低コスト、短納期で構築できる顧客の声を収集する仕組み」「新会社、プロジェクト、M&Aの垂直立ち上げ」「17言語に対応するグローバル性」「山梨県甲府市の定額給付金支給管理システムのような特別プロジェクト」という4つに分類できるという。「エコポイント」制度を支える情報システムについては、「国家予算を使用するプロジェクトとして不正防止対策を重視する一方で、消費者の利益とのバランスを大切にした」と話した。

 宇陀氏はまたクラウドコンピューティングは大企業だけのものではないと力説。経済と社会にもたらす影響として、「中小企業の生産性向上」「地方の雇用促進」「在宅勤務、障害者雇用の促進」「日本をアジアのITのハブにできる」の4つを挙げた。