写真●三菱東京UFJ銀行の根本武彦 常務取締役コーポレートサービス長
写真●三菱東京UFJ銀行の根本武彦 常務取締役コーポレートサービス長
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 企業の競争力向上に大きな成果を上げたIT活用事例を表彰する「IT Japan Award 2009」において,三菱東京UFJ銀行の「システム本格統合(Day2)プロジェクト」が,経済産業大臣賞(グランプリ)に輝いた。受賞にあたり,同社の根本武彦 常務取締役コーポレートサービス長が講演をした。

 三菱東京UFJ銀行の「Day2」は,旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムの統合プロジェクトである。特徴はその規模にある。プロジェクトに参加した技術者はピーク時に6000人,投資額は2500億円,開発期間は3年弱,総工数は11万人月に及んだ。この巨大プロジェクトを大きなトラブルなく予算・納期どおりに完了させたことが,グランプリ受賞につながった。

 根本氏は,この巨大プロジェクトの陣頭指揮を執った責任者。特別講演「システム統合にみるプロジェクト運営~現場責任者として心がけたこと~」では,冒頭に「プロジェクトに参加した全員が評価されたものと考えている。一同,大変光栄に思っている」と喜びを語った。

リスクを数値化,現場の一体感を重視

 プロジェクトを率いるにあたって特に心がけたこととして根本氏は,(1)万全の準備,(2)現場力の最大化,(3)力・知識を結集する仕組み作り,(4)IT活用――の4点を挙げた。

 事前の準備に関しては,「プロジェクト自体を知ることも大事だが,急がば回れ。既存システムの特性や課題の把握を怠らないようにした」。また,リスク管理も重視。「準備時に洗い出したリスクは全846件。すべてを数値化・可視化して影響度や対応状況を判断できるようにした」。

 また,現場力の最大化も心がけた。「プロジェクトを円滑に進めるには人間関係の円滑化が大切」とし,結束式や出陣式などを積極的に開催した。また,「突き詰めればやはり人。従業員の満足度向上を重視した」という。

 従業員の力・知識を結集する仕組み作りについては,プロジェクト開始時に,各種ガイド,マニュアル,ルール,チェックリストなどを開示。ノウハウを組織的に共有できるようにした。さらにその上で,「トラブル回避策などを他の組織にすぐに反映させる横展開の仕組み作りが欠かせない」と語った。

 IT活用については,「今回の統合プロジェクトは,システムの進化の過程と位置付け,市場変化に応じて柔軟に対応できるようにすることを心がけた」。例えば,営業店舗に設置していたサーバー2000台の統合を図った。

人材育成の大切さを実感

 根本氏は最後に,このプロジェクトを振り返って「やはり大切だと実感したのが一人ひとりの力。普段の人材育成の重要性を再確認した。そして何より今回のプロジェクトが,参加した一人ひとりの力になったと信じている」と語った。

 「IT Japan Award 2009」は優れたIT活用事例を表彰するもの。日経コンピュータが創設し,今回で3回目を迎えた。2009年1月から3月末までに集まった78件の応募の中から,松田晃一 情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター所長を委員長とする審査委員会で最終選考を実施。三菱東京UFJ銀行の「システム本格統合(Day2)プロジェクト」が経済産業大臣賞(グランプリ)に輝いたほか,準グランプリには,いなぎ図書館サービス,セイコーエプソン,チューリッヒ保険,ツムラ,テクノプロジェクト,日本通運の6つの案件が選出された。東邦チタニウム,リコー,良品計画の3社が特別賞を受賞した。