写真●スターバックスコーヒージャパンマーケティング本部 WEB・CRMチーム チームマネージャーの長見 明 氏
写真●スターバックスコーヒージャパンマーケティング本部 WEB・CRMチーム チームマネージャーの長見 明 氏
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 2009年6月30日に開催されたNET Marketing Forum 2009に,スターバックスコーヒージャパンマーケティング本部 WEB・CRMチーム チームマネージャーの長見 明 氏が登壇(写真)。Webサイトで実現するスターバックス体験と題して,Web上で「スタバブランド」を醸し出すポイントを伝えた。

 長見氏は自社ブランドの持つ特殊性を「ブランドコミュニケーションの中心は店舗であり,店頭でのお客様との接触がメディアでの接触を上回っていること」と説明。従業員(スタバではパートナーと呼ばれる)とのあいだに起こるリアルなコミュニケーションがブランド形成の第一要素だと語った。

 また,常連客の売り上げが大きな割合を占めており,サイト訪問者もリピータが多いという支持者の属性に注目。そのうえで店舗とWebの足し算でブランド体験を豊かにしたいという目標を掲げて,それを実現していった。

5ページに自社の強みを盛り込む

 まず,サイト構築にあたって,2008年4月に開始した調査から,訪問者の20%が1ページで離脱する一方,70%が5ページ閲覧するというデータを入手。この5ページの質をどう向上させるかに集中しつつ,サイト・アーキテクチャの改善を図っていった。

 具体的には利用率が高いトップページを重視し,トップページを通過することを前提とした5ページに自社の強みを盛り込む計画を立案。季節ごとにトップのビジュアルやサイト全体のスキンを変更できるように整え,ユーザーのし好に合わせてローカルのナビゲーションを動的に変化させるといった工夫をした。

 「ユーザーにグローバルナビゲーションでサイトを周回してほしいというのは無理な注文。ユーザーの好きな文脈のなかで,何か発見をしてほしい」という思いを持ちながら,企画,運営していったという。

「勝ちパターン」の把握が必要

 ユーザー導線のなかに,どのようにブランド体験を詰め込むかという課題に対しては「勝ちパターン」の把握が必要だと考え,必要な要素のセットを「興味喚起(inspire)」「会話し,おすすめする(conversation)」「お客様が比較検討(consider)」「サイドトリップ(side trip)」のキーワードで整理。このキーワードの具体的な活用方法を解説しつつ,理想的な運用状況を維持するための組織体制作りを進めていった。

 さらに,自社ブランドのファンに響く企画を吟味し,製品から生まれたさまざまなストーリーをユーザーが楽しみながら深掘りできる仕組みを作り,「認知形成しようとかではなく,うわべでなく(スターバックスの世界観に)ハマってほしい」とした。

 そして最終的に求められるのは「ブランドパーソナリティ」であるとし,「ブランドを人格にたとえた場合,ブランドの人格とサイトの人格は一致しているか?ブランドの人格は魅力的か?ブランドにふさわしい,良好な対人関係を構築できているか?」という問いかけに応じようと模索を続けるのがスターバックスの立ち位置だと強調。そのうえで「まずは自分の魅力をしっかり伝えることが大事。そうすれば,支持をいただけるはずだ」と締めくくった。