ネットワンシステムズは2009年7月1日,2009年度の事業戦略説明会を開催。短期的にはネットワーク・インテグレータとしてデータセンター仮想化やユニファイド・コミュニケーション・システムにおける競争力を拡充し,中長期的にクラウドの課金や運用管理などの標準プラットフォーム・ベンダーとしての地位を築く戦略を明らかにした。
「2009年度の事業戦略に『クラウド』の文字はない」(吉野孝行社長,写真)。2009年度は,「ネットワーク事業における差別化」「(顧客)サービス事業の拡充」「ユニファイド・コミュニケーション事業の推進」「データセンターおよび仮想化案件の獲得」を事業戦略の柱とする。「シスコ製品で最大手の販売代理店と見られているが,それは事実。シスコのデータセンター仮想化製品群『Unified Computing System(UCS)』の提供準備を進めている」(吉野社長)と基本路線は前年度を引き継ぎ,「KDDI クラウドサーバサービス」などで使われている米3Teraのクラウド構築ソフト「AppLogic」のライセンス・ビジネスなどが加わる程度という。
中長期の成長戦略の要となるのは,クラウド・コンピューティング市場における地位固めだ。クラウドにおける課金や運用管理の標準API策定の動きに積極的にかかわり,「XaaSポータル」と呼ぶID管理やアクセス制御,課金,運用管理といったサービス群のポータルを構築。パブリック・クラウドの課金や運用管理に物足りなさを感じるユーザー企業に対して提供する構えだ。さらにパートナーを巻き込みXaaSポータルのサービス拡充を図る考え。吉野社長は「クラウドの決済システムを信用し切れないユーザー向けに新しい付加サービスが必要」とその意図を説明する。
XaaSポータルは,海外でのパブリック・クラウドのAPI標準化の動きと,国内通信事業者が中心となるプラットフォームのオープン化の動きの双方をビジネス機会にできる事業戦略と言える。国内では,通信・放送関連法を一本化する「情報通信法(仮称)」で,国内の通信事業者が持つID管理や課金などの機能を「プラットフォーム」と定義し,同レイヤーでのオープン性を確保するための規制の在り方を議論している。海外では「クラウドのAPI標準化は2009年9~10月ころに色々な団体が立ち上がると聞いている」(吉野社長)とし,具体的な参画状況への言及は避けた。