JaM Japan Marketing代表 大柴ひさみ氏
JaM Japan Marketing代表 大柴ひさみ氏
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大柴ひさみ氏の講演「ソーシャルメディアを駆使して成功したオバマキャンペーン~米国WOM(クチコミ)マーケティング最新事情」
大柴ひさみ氏の講演「ソーシャルメディアを駆使して成功したオバマキャンペーン~米国WOM(クチコミ)マーケティング最新事情」
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 「市民をアクティビスト(行動者)に変えた」---2009年6月30日,大柴ひさみ氏は都内で開催された「NET Marketing Forum 2009」で,オバマ氏の選挙キャンペーンをこう表現した。大柴氏は米JaM Japan Marketing代表で,米サンフランシスコ在住のマーケティング・コンサルタント。「YouTube 時代の大統領選挙 米国在住マーケターが見た、700日のオバマキャンペーン・ドキュメント」の著者でもあり,NETMarketing Onlineで「米国ネットマーケティング茶話」を連載している。講演の題名は「ソーシャルメディアを駆使して成功したオバマキャンペーン~米国WOM(クチコミ)マーケティング最新事情」である。

「自分たちが発信できる」ことを自覚した

 大柴氏はまず,YouTubeにアップされたオバマ候補を応援するビデオ「Yes We Can」を紹介。ミュージシャンらによるWill.i.amがオバマ氏の演説にインスパイアされて作ったものだ。「作った作品をシェアする方法がたくさん出てきた。その典型例がこれらのビデオ」(大柴氏)。

 Twitterはボーダレスなツールとなった。天安門事件20周年を警戒して中国政府がTwitterをブロック。イラン市民がTwitterでその声を世界に発信した。「コミュニケーションのパラダイムシフトが起きている。テクノロジが進歩したことはもちろんだが,何より人々が『自分たちが発信できる』という自覚を持った。マインドセットのシフトが起きた」(大柴氏)。

 Forrester Researchのソーシャル行動に関する調査では,人々をクリエイタ,批評家,収集家,参加者,見物人,行動しない人に分類している。2006年と2008年の調査を比較すると,唯一「行動しない人」が減少しており,52%から25%に減っている。クリエイタは13%から21%に増加した。「みんな行動したいと思っている」(大柴氏)。

プライベートなFacebook,パブリックなTwitter

 「コミュニケーションはどんどんデモクラティック(民主的)になっている」と大柴氏は言う。CNNと俳優のアシュトン・カッチャー氏が,どちらが早く100万人のフォロワーを集めるかを競い,カッチャー氏が勝利した。「個人がCNNというブランドに勝った」(大柴氏)。サンフランシスコ市長のゲビン・ニューソン氏は州知事出馬をTwitterで宣言した。現在50万人のフォロワー獲得のための「Tweetathon」を実施中だ。

 Twitterのユニークビジターは2009年6月で2000万となり,New York TimesとWall Street Journalのサイトを追い抜いた。TwipicやTrackThis,Tweetjobなど,Twitterのマッシュアップ・サービスも生まれている。

 ただし米Nielsenの調査によれば,FacebookやMySpaceのユーザー定着率は60%以上あるが,Twitterは40%にとどまる。「Facebookは仲間同士が楽しむ場。Twitterはそれとは逆に非常にパブリックな場」(大柴氏)。Twitterは10%のユーザーにより90%以上の書き込みが行われている。TwitterはOne-to-Manyのパブリッシングなのかもしれないと大柴氏は見ている。

 Twitter活用のポイントは,長期的なコミットメントと頻繁なアップデートであると大柴氏は指摘する。「単なるトレンドとしてPR効果を狙う安易な使い方ではユーザーとエンゲージできない」(大柴氏)。