写真●インテル マーケティング本部 本部長の江田麻季子氏
写真●インテル マーケティング本部 本部長の江田麻季子氏
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 2009年6月30日に開催されたNET Marketing Forumの特別講演で「インテルのネットマーケティング戦略」と題しインテル マーケティング本部 本部長の江田麻季子氏がIntelプロセッサCentrino 2を対象にした一連の販売促進活動を紹介した(写真)。

 キャンペーン対象のCentrino 2は家庭のメインマシン用に適した普及型のプロセッサ。江田氏はまず市場をアーリーアダプタ層とメインストリーム層に分け,日本でコンシューマ向けに商売をするには,「PCに興味がなく,新しく,便利で,お買い得感」を求めるメインストリーム層との距離感を縮める必要があると説明。そのうえで「一般コンシューマにCPUで指名買いしてもらえるように,技術を知ってもらうマーケティング活動をする」と目的を説明した。

 キャンペーンはテレビ,バナー,ティザーなどの広告に加え,自社サイト内でのキャンペーン特設サイトや,個人向け常設サイトの公開までシームレスに展開した。まずはCentrinoという難しい名前を覚えやすくするため「鳥」をモチーフに親子キャラクターを作り,2人がダンスを披露するテレビCMを放映することから始めた。2008年の秋口に放映した鳥の子供キャラクターが単独で登場するCMは,女性や子供の間で話題になったという。

 続いて開始したネット上での展開では,やはりテレビCMのキャラクターをメインに据えたバナーを制作してサイトへの集客を図った。特にSNSのmixiのトップページで展開した「ログイン画面ジャック」と呼ばれる手法では「セントリーノ親子の悩み相談」のようなユーザー層のし好に合わせた仕掛けで自社サイトへ誘導した。

 キャンペーン向けスペシャルサイトでは鳥の子供が旅をする設定で,ストーリーの流れの中でさまざまなメーカのPCを紹介する工夫を紹介した。中でもガチャガチャを模したゲームコンテンツは,応募券が当たるというプレゼント企画ながら,プレゼントの代わりに各社メーカのPCを出すしかけが好評で,ここからメーカのサイトにジャンプする率も高かったという。

 さらに,「最新のPCが良いのはわかっているが,自分のと比べてどれが良いのかはみんなが悩むところ」という視点から,身近な使い方をモデルにして,今持っているPCと新しいPCを比較するシミュレーション・コンテンツを個人向け常設サイトで公開。「数字や表など具体的にどこがいいのかがわかるコンテンツは好評だった」と,当たる企画の方向性を示唆した。従来あまり積極的でなかった携帯コンテンツにも2008年12月から挑戦。待ち受け画面,ゲーム対する人気度は,驚くほどだったという。

 パソコン購入時の重要な情報収集源は,日本の場合9割が店舗。しかしインターネットも8割が重視しているという調査結果を紹介しながら,「情報収集したあと予算額に変化が無かった人は半数だが,実は増えた人も3割にのぼる。情報収集の期間に意思決定に対し影響を与えることはできる,と実感を持った」とリサーチ結果を評価した。こうした効果はオンラインメディアのみでなく,クロスメディアとして展開したアプローチが功を奏したと分析し,ターゲットに合わせた総合的な施策が効果的だと述べた。

 しかしながら「今後はROIをできるだけ早く理解することに注力したいが,より多面的な効果測定手法が必要」と課題も残る点に言及。日本のオンライン環境は進んではいるが,効果測定の部分で欧米より遅れを取っていると語った。具体的にはユーザーの軌跡を分析する施策が欠けていること,チャネル間にあるユーザー動向のオーバーラップを観測する方法が足りないことを指摘。「ユーザーがどういうきっかけで,どういう気持ちでネットの情報を歩いたのかがわかれば,より効果的なキャンペーンができるのではないか」と問題提起した。