写真1●パネルディスカッションでは、OGC発足の趣旨や参加企業の紹介があった
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写真2●OGCでは右のオープンなAPIの世界をイメージしている
写真2●OGCでは右のオープンなAPIの世界をイメージしている
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 「電子政府にはクラウドに移行できるところがたくさんある。良い電子政府を作るには、クラウドへの移行を考えられる今が最後のチャンスだ」。サン・マイクロシステムズ ビジネス開発営業本部本部長 クラウドコンピューティング統括責任者の中村彰二朗氏は、こう力説する。2009年6月25日、クラウドコンピューティング関連のイベント「Open Cloud Innovation Forum」(サン・マイクロシステムズ主催)のパネルディスカッションでの一コマである(写真1)。

 パネルディスカッションは、「オープンガバメントクラウド・コンソーシアムのミッション」と題したもの。オープンガバメントクラウド・コンソーシアム(OGC)は、電子政府および電子自治体をオープンなクラウド技術で実現することを目的とした組織である。2004年から活動してきたオープンスタンダード・コンソーシアム(OSC)を発展・再結成したもので、この6月2日にキックオフミーティングを開催したばかり。現時点でアクセンチュア、インターネットイニシアティブ、サン・マイクロシステムズをはじめとする19社が参加している。今回のパネルディスカッションで、その活動の方向性を明らかにした。

 OGCは、(1)世界最高レベルの電子政府の実現、(2)環境が配慮されたIT普及モデルの実証と提言、(3)高度IT人材の育成や地域のIT産業の活性化――を目的に掲げる。そのために、オープンスタンダードに基づくクラウドコンピューティング環境を構築する仕組みを作る。

 その具体的なプロジェクトとして最も象徴的なのが、「クラウドサービスの標準化を実現するために、Open APIを作る」(サンの中村氏)こと(写真2)。パネリストの伊藤忠テクノソリューションズ エンタプライズビジネス第2本部 本部長補佐 木下 博司氏は「従来の電子政府では、共通基盤を作ってオープンに使おうとしても、すぐにベンダーの技術が入り込んでクローズドになってしまった。共通基盤が乱立するというおかしなことが起こっていた。OGCが目指すクラウドでは、そうならないようにベンダーではなくOGCがOpen APIを作り、自由にサービス開発やデータセンターの利用ができるようにする」と説明する。

 「最近、霞が関クラウドや自治体クラウドという言葉が広まっている。しかしそれを補正予算の話に閉じこめてはいけない。電子政府を本当にやり直して作るならば、クラウドモデルが最も適しており、そのタイミングは今しかない」(サンの中村氏)。クラウドを利用した電子政府で世界をリードするためには、動き出すタイミングとして今を逃してはいけないというわけだ。プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント 北海道リージョナルデベロップメントセンター マネージャーの古見 彰里 氏も、「公共や自治体でも、民間に負けないような効率のよいシステムが求められている。システムを“持つ”のではなく、経営力を向上させるために“使う”時代が来ている。電子政府がクラウドにシフトするタイミングであり、オープンなクラウドでコストも下げられる」と語った。

 目指すイメージとしては、「利用するものはシステムからサービスへと、時代は変化している。利用型の世界ではAPIがきっちり作られていることがとても重要で、OGCの意義は大きい。レゴのブロックを乗せるように、プラットフォームの上で自由にサービスを組み合わせて使える環境が求められている」(TIS IT基盤サービス事業部 IT基盤サービス第1部 部長の松田 毅 氏)。

 OGCは、電子政府や電子自治体が、共通基盤の上で最も便利で有効なサービスを選択できるようになり、それが利用者に還元される世界を目指して活動を始める。政府への提言組織と自らを位置づけて、「成果を毎月の単位で報告していきたい」(サンの中村氏)とその意気込みを語った。