NTTデータは2009年6月25日、山形県の荘内銀行および秋田県の北都銀行との間で、地銀向け共同システムの導入検討について基本合意したと発表した。この10月に経営統合する荘内銀と北都銀は、NTTデータが開発中の共同システム「STELLA CUBE」の導入を目指す。利用開始は2012年10月以降の予定だ。北都銀は富士通製の勘定系システムからのリプレースとなる。

 同一仕様の勘定系システムを使うことにより、事務効率の向上とITコストの削減を狙う。荘内銀はNTTデータの共同システム「地銀共同センター」からSTELLA CUBEに乗り換える。

 システム統合方針の検討にあたって、両行には大きく三つの選択肢があった。一つ目は北都銀が使う富士通製システム「PROBANK」への片寄せ。二つ目は荘内銀が参加する地銀共同センターに北都銀が加わる案。三つ目は両行とも新たなシステムを導入する形だ。

 このうち一つ目の可能性は低かった。今回の経営統合が実質的に荘内銀の主導だからだ。となると、荘内銀が参加する地銀共同センターに北都銀が加わるという二つ目の案が最も有力なように見えたが、ここに一つ問題があった。

 地銀共同センターには、北都銀と同一地盤の秋田銀行がすでに参加を決めている。地銀の共同システムでは、参加行による営業地盤の重複をできるだけ避けるのが常識だ。共同システムの仕様を決めるためには、参加行がお互いに商品・サービス戦略や事務手順といった「手の内」をある程度は見せ合う必要がある。「ライバル行が同一陣営に同居するのは難しい」(共同システムを利用する地銀幹部)。

 そこで荘内銀と北都銀は、第三の選択肢を選んだ。といって、新システムを一から構築すると費用がかさむしリスクも高まる。そこで、参加行と営業地盤が重複しないSTELLA CUBEへの参加にたどり着いた。荘内銀と北都銀以外のSTELLA CUBEの参加行は、長野、神奈川、東北(岩手県)、東京都民、富山、但馬の6地銀である。

 STELLA CUBEは地銀共同センターと同様に、NTTデータの勘定系パッケージ「BeSTA」を中核に採用する。二つの共同システムは陣営こそ異なるものの、どちらもNTTデータが構築・運営主体であり、機能・仕様面で共通部分は少なくない。NTTデータは、共同システムの乗り換えに伴う荘内銀の作業負担を極力減らす手段を検討する。

 結果的に、富士通はNTTデータとの顧客争奪戦に敗れた。一方のNTTデータは北都銀の獲得により地銀の顧客数を32行に増やした。特に青森・岩手・秋田の北東北3県に限定すると7行中5行がNTTデータの顧客となった。地銀共同センターと次期共同センターはともに日立製作所製メインフレームで動作する。STELLA CUBEの稼働は2011年5月の予定だ。