宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2009年7月から順次,PHSを利用したFMC(fixed mobile convergence)の導入を開始する。従来は各拠点で契約した約700台の携帯電話を利用していたが,業務を効率化するために,拠点内外にかかわらず内線番号で通話できる環境を整える。2009年7月に東京,9月に筑波,11月に鹿児島・内之浦,2010年4月以降に調布,相模原,種子島と,各拠点へ段階的に導入を進める。最終的には,JAXA全体で2500台のFMC対応PHS端末を利用する。

 同機構では,FMC導入のプロジェクトを「JAXA-FMC構想」と名付けて,5年前から検討を進めてきた。一時期は携帯電話と無線LANのデュアル端末も検討したが,種子島の宇宙センターのような広大な設備内では,無線LANの通信エリアの整備が難しいといった理由で採用を見送った。最終的には,電波の出力が弱く,ロケットの制御設備などに影響を与えにくいとして,PHS端末を使うウィルコムのFMCサービス「W-VPN」を採用した。

 PHSに割り当てる050番号の下5桁を内線番号とする。PHSを所有する職員が施設外に出ている場合でも,内線番号で呼び出せる。運用上では,職員が部署を異動した場合でも,継続して同じPHS端末と内線番号が使うようにするという。

 従来は各拠点にPBX(構内交換機)を設置していたが,筑波宇宙センターに設置したIP-PBXに内線電話の処理を切り替える。PHSやIP-PBXの導入で全体の通信コストは従来の8分の1に削減できる見通し。WAN網はKDDIの広域イーサネットを使う。事故などに備えて,IP経由の内線通話ができなくなった場合には,公衆電話網に切り替える仕組みも用意している。