シスコシステムズは2009年6月17日，動画配信サービス・プロバイダー向けのソリューション「medianet」を今後強化する方針を発表し，medianetを使って技術的に提供可能なサービスのデモンストレーションを行った。米Cisco SystemsのSteve Silva副社長は，2013年にはコンシューマー向けインターネット・トラフィックの約60％を動画が占めるという予測を示し，この事業向けのソリューション・ビジネスに積極的に取り組む姿勢を示した。
medianetは，同一のコンテンツをスマートフォンやパソコン，テレビなどの異なる端末に最適なフォーマットの動画を配信できる統合プラットフォームで，動画サービスだけでなくテレビでWebサイトのコンテンツを利用したり，ガジェットのようなWebアプリケーションを利用したりすることもできる。またカスタマイズ広告の配信や，番組の冒頭にさかのぼって視聴できるスタート・オーバー機能，ビデオ・オンデマンド（VOD），タイムシフトなどの機能も提供できる。
日本国内の主要なIPTVサービスで採用されているIPTVフォーラム規格とmedianetの位置づけについては，「当社はこれまでも国際標準と同様，製品提供地域の業界標準をサポートしてきた。各マーケットにおける標準仕様には対応する」（Cisco Systems Connected Home GroupのPankaj Guptaディレクター）と語り，積極的にサポートする方針を示した。
medianetの実際の活用例として，英国で多チャンネル・サービスと固定通信，移動通信，インターネット接続のクアドロプル・プレイ・サービスを提供する英Virgin Mediaが，英BBCのパソコン向け見逃し視聴サービス「iPlayer」のコンテンツをVirgin Mediaのテレビ向けセットトップ・ボックス（STB）で提供している事例を紹介した。BBCは全チャンネルの放送番組を，放送後7日間，iPlayerサービスのWebサイトで配信している。数千時間分のコンテンツが新旧入れ替わる形で常に更新されている状況で，この膨大なコンテンツをVirgin Media向けにトランスコードして提供するのは，コストと時間がかりすぎて現実的ではないという。
そこでBBCとVirgin Mediaは，medianetを使ってBBCとVirgin Mediaのネットワークを橋渡しすることで，STBから直接BBCのコンテンツを利用できるようにした。その結果，BBCの膨大なコンテンツすべてをVirgin Mediaの利用者が視聴できるようになったという。
また，medianetを使って提供可能なサービスとして，STBで途中まで視聴したコンテンツの続きをスマートフォンやパソコンを使って視聴したり（写真1，2），利用者の属性に合わせてCMを配信し分けたりするデモンストレーションを行った。
