米グーグル検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当副社長のマリッサ・メイヤー氏
米グーグル検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当副社長のマリッサ・メイヤー氏
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 グーグルは2009年6月15日、同社の検索エンジンの進化の方向性とその背景を説明する記者説明会を開催した。米グーグル検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当副社長のマリッサ・メイヤー氏は方向性として、「検索の入力を簡単にすること」と、「パーソナライズされた関連性に応じて検索結果を出すこと」が課題と進化の方向性になると説明。また、米国を中心に利用者が急増したマイクロブログサービス「Twitter」の投稿データの検索については、「(Webサイトと同時に画像や動画などさまざまな検索結果を表示する)ユニバーサル検索に出す方向で考えている」と方針を明かした。

 メイヤー氏はまず、検索技術の進化の背景となるネット上の情報量の急増を説明した。グーグルがインデックスする情報量は5年前が5エクサバイト(エクサは100京)だったのが、現在は281エクサバイトに増えているという。

 Webページが単純に増えている面もあるが、ユーザー投稿が増えているのが急増の大きな要因だ。動画、写真、ブログなどの投稿量は3年前の15倍になるという。現在、動画投稿共有サイト「YouTube」に1分間に投稿される動画は平均20時間分、写真投稿共有サイト「Picasa」へ投稿される写真は同4800枚にも上る。急増の結果、ネット上のデータの入れ替わりが激しくなり、Googleの検索結果の20%が過去3カ月に無かったもの、Googleの検索エンジンロボットが収集するデータのうち15~20%が新しいデータなどといった統計結果を明かした。

 そうした背景やユーザーの検索への期待が大きくなっていることを受けて、検索語の入力を簡単にすることと、普遍的な関連性でなくパーソナライズされた関連性に基づき検索結果を出していくことが今後の課題になると説明した。「ユーザーが努力するのでなく、我々が努力して検索を簡単にしていく」(メイヤー氏)という。

 検索語の入力を簡単にする手法としては、似た画像を検索できる「Google similar images」の機能を使って、月の写真を画像検索で探す例などを紹介した。ユーザーは月の特定の満ち欠けの状況を頭に描いても、検索語では表現できない。そこでまず「moon」で画像検索して出てきた画像の中から、自分が思い描くものに近い写真を選び、「Similar images」のリンクをクリックする。するとと同様の写真が多数出てくるので、さらに好みに応じたものを探す流れだ。

 パーソナライズされた検索結果については、携帯電話の基地局情報やパソコンのIPアドレスに基づいたローカル検索の事例などを紹介した。IPアドレスであれば町単位まで判明するという。

 こうして検索が進化し、ユーザーが情報をうまく探し出し出せるようになり、ユーザー投稿や検索語の入力といった「ユーザーの貢献」(メイヤー氏)が増えるという循環が進むことで、ネットの世界、世の中を良い方向へ変えていくことをグーグルは目指すという。

 その例として、検索語の増減の傾向を活用したインフルエンザの流行把握の事例を紹介。インフルエンザに関する検索は一般的に冬にピークが来るが、今年の4月にはメキシコで急増。さらに検索ユーザーの地域が流行地域と重なっていたという。今後、Twitterの投稿内容などと合わせて分析することで、「ユーザーの貢献を基に社会全体に貢献できるサービスができるのではないか」(メイヤー氏)と考えていると言う。

 グーグルがまだ手掛けていない領域として注目されているTwitter検索については、「グーグルのインデックスについてはブログ、ニュースなどでスピードを重視しており、全世界的に見ても一番速い。マイクロブログの検索もユニバーサル検索に出す方向で考えている」(メイヤー氏)と明かした。ユニバーサル検索は、ユーザーの関心を推測して、ウェブ検索と一緒に動画、画像、本、地域情報、ニュース、米国では製品情報なども交えて出すサービス。現在、Google検索全体の9~15%でユニバーサル検索を表示しているという。