写真●KDDIの古賀靖広・渉外広報本部渉外部長
写真●KDDIの古賀靖広・渉外広報本部渉外部長
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 KDDIは2009年6月15日,通信業界の競争政策について,記者向けの説明会を開催した。KDDIは,NTTグループの組織体制について見直しが予定されている2010年に向けて,現状の問題点を再提起し,議論を活性化させていきたい狙いだ。

 KDDIが問題視しているのは,NTTグループの持ち株会社体制と,NTT東西地域会社に地域通信以外の事業編の進出を認める「活用業務」制度の二つ。 KDDIの古賀靖広・渉外・広報本部渉外部長(写真)は,これにより,1996年に当時の電気通信審議会が答申したNTTの再編成の主旨が無効化していると指摘する。「本来,NTTコミュニケーションズが他の事業者と競争する想定の事業領域に,NTT東西が電話時代の顧客基盤を背景に進出し,IPサービス時代でも独占体制を継続しようとしている」という。

 古賀部長は,「固定通信においては様々なサービスでNTTグループのシェアが高まっている」という。例えば,電話の県間通話におけるNTTグループのシェアは「2001年度に50%を切る水準まで落ちたものの,識別番号無しで事業者を選べるマイラインが導入されてからは,再び上昇している」とする。また,固定電話市場にかいても,「NTT東西のアナログ加入電話の契約者数は減少しているが,フレッツ光サービスの「ひかり電話」への置き換えが進んでおり,IP電話も含めたシェアは依然として85%以上を占めている」という。

 NGNについても,「本来はグループの中では,NTTコミュニケーションズが運用すべきものを,NTT東西がやっている。持ち株会社の下,グループは1企業として活動し,アクセス部分の顧客基盤を背景に上位レイヤーも含めて独占体制を築こうとしている」と警鐘を鳴らす。

 こうした状況に対して古賀部長は,「公社時代からの顧客基盤を支えているアクセス・インフラ部分と,上位のサービスを切り離し,ユーザーが様々な事業者を選択できるようにすべきだ」と説く。KDDIの案としては,「インフラ管理機能と,サービス運用機能の二つに,組織を分離することを検討すべきだ」という。

 KDDIがこのタイミングでこのような説明会を開いた意図は,「NTT再々編議論を風化させないために,2010年に向けて活発に議論するために,議論開始ののろしを上げること」(古賀部長)だという。今後は,NTTグループに対して,NTT自身の考えを示すことを求めるなどして,さらなる議論の活性化を進めていきたいとしている。