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[Interop 2009]立ち見も出た“夏野×ひろゆき”対談,「ネットの未来は日本が創る」

2009/06/15
菊池 隆裕=日経コミュニケーション
満員となった基調講演会場
満員となった基調講演会場
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Twitterなどネットをフル活用したオバマ大統領
Twitterなどネットをフル活用したオバマ大統領
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米国で成功しているテレビ番組配信「Hulu」
米国で成功しているテレビ番組配信「Hulu」
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ユーザーによる生放送が急増
ユーザーによる生放送が急増
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「未来は日本から」がメッセージ
「未来は日本から」がメッセージ
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 6月10日〜12日に行われた「Interop Tokyo 2009」最終日の基調講演に登場したのは,NTTドコモでiモードを立ち上げた夏野剛氏と,2ちゃんねるの元管理人,現「ニコニコ動画」管理人「ひろゆき」こと西村博之氏。ネットの世界をよく知り,歯に衣を着せぬ2人の対談が聞けるとあって,立ち見が出るほどの盛況ぶり。硬軟織り交ぜた2人の軽快なトークに,会場は大いに沸いた。

 「ポスト・インターネット」というテーマを与えられた夏野氏が,今回の対談の話題として選んだのが「ネットと政治」,「ネットとテレビ」,「ネットによる生中継」そして「日本のプレゼンス」である。いずれも,ネットの浸透によってこれから大きく変わる可能性があるもの,という視点で選んだようだ。

「Twitter」で親近感を演出したオバマ大統領


 まず夏野氏は,インターネットを利用して選挙戦を戦ったオバマ大統領を取り上げ,「オバマ氏は,インターネットで大統領になったのか」と切り出した。西村氏は,「支持母体を持たないにも関わらず存在感を示したのは,ネットの役割が大きい」と,オバマ大統領のネット活用を評価する姿勢を示す。特に,オバマ氏が愛用したミニブログ「Twitter」を取り上げ,「オバマ氏が,自身のメッセージをTwitter経由でリアルタイムに国民に直接送り届けたことで,これまでには無い親近感が得られた」と評価した。

 これを受けて夏野氏は「オバマ大統領のおかげで,いろんなことががらりと変わったと思っている」という。その代表例が,日本の政治家がブログやホームページをはじめ様々なツールを使うようになったこと。さらには,一部の政治家がニコニコ動画で生放送をしている例を挙げて,「政治というのは,一般には最新技術に疎くて,遅れているものなのだが,産業界のトップよりも進んでいる人もいる」と,大企業のトップのネット活用が足りないのではないかと指摘した。

 例外としたのが,ソフトバンクの孫正義社長である。ソフトバンクモバイルは携帯電話の新商品発表会をニコニコ動画上で生中継しており,「孫社長は,ニコニコ動画に寄せられたユーザーからのコメントを見て,売れ行きを予想しているらしい」(夏野氏)。西村氏は,「それ(生中継)ができるかどうかは,本人の強さではないか。サラリーマンとは,かかるプレッシャーやサービス精神が違う」と分析した。

視聴者に生活スタイルを押し付けてはいないか


 2番目の話題は既存メディアとネット。夏野氏は,新聞,雑誌,テレビの市場が縮小しているという統計データを紹介した上で,米グーグルによる絶版書籍の販売に出版業界が反対していることを取り上げ,「ネットを敵対視するのではなく,ネットを生かさないと売り上げは減る一方だ」と,出版側の姿勢に疑問を呈した。

 西村氏は「リアルタイムの情報を知りたい人はネットに来ている」という持論を披露するが,夏野氏は「TBSは,全番組の60%を生放送対応にしたが,視聴率が大きく落ちたようだ」と指摘した。同氏はこの結果について「事件がないときには生中継の魅力はない。単に生中継するのではなく,イベント性を打ち出さないといけないだろう」と付け加えた。これに対して西村氏は,「テレビでは少なくとも100万人が面白がらないといけないが,そんなコンテンツは少ない」とした。

 広告が不振に陥っているテレビ局に対しては「やりようがある。あれだけお金があって,出演者を選んで作ったコンテンツを,限られた放映時間で無いと見られないのがおかしい」というのが夏野氏の持論だ。これは,以前同氏が出演したテレビ番組で,ほとんどのテレビ局関係者が「放映時間に視聴してもらうこと」にこだわっていたことが背景にある。

 西村氏も「これだけ商品が多い世の中で,提供者側の“この時間に見て欲しい”という願望に視聴者が生活スタイルを合わせる,というのは受け入れられない」と同調した。

 次に夏野氏は,米国では「Hulu」が流行っており,2009年3月にはYouTubeに次ぐ動画サイトに育っていることを紹介。Huluは,2008年の広告収入が65億円,利益が12億円であるという。この数字を見た西村氏は「テレビのコンテンツ自体が悪いわけではない。お茶の間まで来ないと見られないのがおかしい。番組を送る手段は電波でなくてもいいんじゃないか」と伝達手段について柔軟性を持ったほうがいいと提言した。

 そこで夏野氏は「そもそもテレビとは何かと考えたい」と問いかける。テレビには,“コンテンツとしてのテレビ”と “箱や放送波としてのテレビ”の面があるとし,テレビ局は箱や放送派としてのテレビにこだわりすぎではないかと指摘した。西村氏も「番組製作者は,本来は多くの人に見てもらいたいと思うのだが,放映時間にこだわるのはよく理解できない」と,ここでも二人の意見は一致する。

ネットの生中継がリアリティを伝える


 最近,新しいネットの利用方法として夏野氏が注目しているのが,ネット上での生放送だという。ニコニコ動画では,政治家による活用や野球中継に注目が集まっている。野球中継では,画面上に野次が飛び交い,まるで球場にいるような盛り上がりぶりだと紹介した。同氏は,「日本ではブロードバンドが進んでいるので動画を流しやすい。1万人同時に見ることが出来るようになった」と提供者側の環境が整ったと分析,西村氏は「テレビよりパソコンの前にいる時間の方が長い。接触しやすいのはテレビよりもパソコンだ」と利用者側からの視点で分析した。

 特に,一般のユーザーが撮影した動画による生放送では,1カ月当たり41万番組がニコニコ動画上で放送されているという。生放送するユーザーの数は1万人くらいなので,一人当たり40番組を流しているという計算になる。

 夏野氏は,「生放送はライブ感が面白い。さらに,視聴者のコメントに放映側がすぐに返してくれるという,新しいコミュニケーション・スタイルが出てきている」とする。西村氏は「これまでのテレビは,100万人が集まるコンテンツを一つ作っていた。それに対し,今のネットでは1000人が集まるものを1000個作るようなアプローチ。それでも100万人集まる。そちらに広告が流れているのではないか」と分析した。

 生中継の今後の展開として注目されるのが,外出先からの中継である。7月にサービス開始を予定するUQコミュニケーションズが提供するモバイルWiMAXなど無線ブロードバンドの広がりで,外出先からでの生放送が可能になり始めた。こうなると「リアリティを伝えられるようになる」という点で2人の意見は合致する。ただし西村氏はそのリアリティを望む視聴者の数について「1000万が見たいわけではない。せいぜい1万人くらいではないか」とみているようだ。

ネットの未来は日本から


 夏野氏が選んだ最後の話題は日本のプレゼンス。「日本人は,“日本がダメ”というのが好きだよね」と切り出した夏野氏が,このテーマで一貫して語ったのは,「日本はIT先進国なので,もっと自信を持ったほうがいい」という主張である。

 西村氏は,日本には競争力があると認めたうえで「海外でもウケる形でやるといい」とする。米国では,2ちゃんねるを模した匿名の投稿による掲示板「4chan」が流行っていて,ウォールストリート・ジャーナルやTimeでも取り上げられているという。さらに,「プロフ」も競争力があるとする。簡単な設問に答えると,自己紹介文章が出来上がるというこなれた使い勝手はほかに例がなく,海外でも通用するだろうとの見解を示した。夏野氏は,せっかく競争力があるのに,「日本は駄目」と思ってしり込みしていたら,ほかのプレーヤが海外で流行らせてしまうことがあると指摘する。

 西村氏は,今後ネットの主役はコンテンツになると予測したうえで,「ゲーム,アニメなどでは存在感を示しているものの,全体としては世界に向かっていない」と現状を評価した。しかし,日本だけを対象にしていたのでは事業が成り立たない企業が増えるので,「一か八か海外に出て行く企業が増えるのではないか」という予想も披露した。

 最後は,夏野氏が「ネット未来は日本が創るという気概で取り組んで欲しい」として1時間にわたる対談を締めくくった。

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