写真●NTTの宇治則孝副社長
写真●NTTの宇治則孝副社長
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 千葉・幕張で開催されている「デジタルサイネージジャパン(DSJ)2009」で2009年6月10日、NTTで技術・成長戦略を担当する宇治則孝副社長(写真)が「サービス創造グループを目指すNTTのデジタルサイネージへの取り組み」と題した基調講演を行った。宇治氏は、新たなメディアでありツールとなりえるデジタルサイネージを活用することで、新たな市場を開拓できると力説。電通などと共同で行った今年2月の実証実験では、デジタルサイネージを用いることで、「我々の当初の予想に反して、ビールの広告は朝の時間帯が効果的であることなどが分かった」と具体的な事例も提示した。

 NTTや電通などが行った実証実験は、1日350万人が視聴できるという規模感で実施したもの(関連記事)。その成果を初めて語った今回の講演で、宇治氏は「個々のデジタルサイネージの端末がネットワーク化し、場所、時間、状況にマッチした広告を動的に切り替えれば、広告効果を高めることができる」と実証実験で十分な手ごたえを得たと総評した。いわゆる4マス広告(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)が低迷する中で注目が集まり始めているデジタルサイネージだが、その注目は単なる期待値だけのものではないとの考えを語った。

 現時点では、ディスプレイなどのハードウエアがデジタルサイネージ市場をけん引しているが、「2011年にはコンテンツなどソフトが市場拡大のけん引役へと逆転する」(宇治氏)という。「デジタルサイネージはネットワークと融合することで社会インフラになる。バーチャルから得た情報をリアルへ、リアルから得た情報をバーチャルへと、リアルとバーチャルが結びつき、2015年に世界最大の1兆円産業となる」(同)という未来図を予測した。

 そのための条件となるのが、ネットワーク化である。デジタルサイネージは電子看板などとも言われ、屋外広告をデジタル化したものだ。既存の屋外広告の枠を超え、ネットワークでそれらがつながり、場所や状況に応じた広告をリアルタイム、かつパーソナライズ化された形で配信されるところに、デジタルサイネージが持つ本来の可能性がある。

NTTはデジタルサイネージで世界を狙う

 このネットワーク化という意味で、重要な存在となるのが国内最大の通信事業者であるNTTである。NTTグループはNGNや高速モバイル通信のインフラを整備する中で、「動画コンテンツがキラーアプリケーション」(同)と位置づけている。そのために、デジタルシネマやIPTVなどを展開するが、デジタルサイネージも動画コンテンツの1つと考えている。

 デジタルサイネージと他の動画コンテンツとの最大の違いを、宇治氏は「ケータイと話せるデジタルサイネージ」「空気の読めるデジタルサイネージ」というコンセプトで言い表わした。両方とも携帯電話と連動したデジタルサイネージ広告を配信する考え方で、動画透かしやログ解析など、その実現のための「技術は十分に整ってきた」(同)。また、広告測定や異なる端末へ同じ広告を配信するなどの配信管理を行う統合プラットフォームを提供する準備も進んでいる。

 さらに、NTTではデジタルサイネージのソリューション化も進める。現時点では、某流通大手と議論しているという。このソリューションはNTTグループの強みを生かし、ネットワークインフラはもちろん、携帯電話向けも含めたネットワーク間での広告配信も付けたパッケージ商品になる模様。宇治氏は「早々に日本で成功事例を作り、将来的にはグローバル展開を図りたい」と、デジタルサイネージの総合ソリューションが海外展開も視野に入れたNTTの野心的なサービスであることも明かした。