フリービットは2009年6月8日,2009年4月期の決算説明会を開催し,2012年4月期までの事業戦略「SiLK VISION 2012」について説明した。

 事業戦略の中で石田宏樹代表取締役社長は「IPv6と仮想化を組み合わせたクラウドプラットフォームの提供で世界一を目指す」と語り,業績目標として「2012年4月期に売り上げ300億円,経常利益45億円を達成できるように,経常利益で対前年比15%の成長を毎年堅持する」と説明した。

 IPv6事業については,現行のIPv4アドレスの在庫が限られており,今後スマートフォン市場が急速に拡大してアドレスの消費が加速することから,移行に関連するサービスのニーズが高まると説明した。フリービットは2003年に既存のIPv4ネットワークでIPv6サービスを提供できるようにする技術「Feel6」を開発済みで,その後ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)76社が参加する大規模な実験などを実施し,6年間かけてコストダウンを行ってきたという。

 Feel6は,現在NTT東西地域会社が総務省に対して,ISPからNGNへIPv6を利用して接続する際の方式として接続約款の変更を申請している2方式うち「トンネル方式」と呼ばれる方式に利用できる。フリービットの試算によると,NTT(持ち株会社)が中期経営計画で2010年度末の目標としている2000万利用者全員をそのままトンネル方式でIPv6に移行させた場合,2800億円の移行コストがかかるという。これに対してFeel6をトンネル方式に利用した場合「利用者側に設置する専用のアダプター機器などが不要となるため,移行コストを十分の一に下げられる」と説明した。また,同様の技術を使ってIPv6ネットワーク上でIPv4を利用できるようにすることも可能で「IPv4からIPv6への移行ソリューションを幅広く提供することで,世界シェア1位を目指したい」と抱負を語った。

 フリービットは,自社で運営するISP事業向けだけでなく,ほかのISPに対するソリューション事業としてもFeel6の提供を検討中である。また,同事業の国際展開の一環として,北京天地互連信息技術有限公司(BII Group Holdings)に対し,IPv6移行ソリューションの協力を行う。

 個人利用者向けの事業としては,スマートフォンや家電製品をコンテンツ配信サーバーとして利用できる「ServersMan」シリーズを,クラウドサービスのプラットフォームと位置づけて強化する方針を説明した。「ServersMan mini」を採用し撮影動画をすぐにインターネットで公開できるエグゼモードの小型ビデオカメラ「ServersMan Scooop by EXEMODE」を発表するとともに,同シリーズの新製品としてネットワーク接続ストレージ(NAS)向けの「ServersMan for NAS」のデモンストレーションを行った。ServersMan for NASについてはNASメーカー1社とソフトウエアの搭載について交渉中だという。