IBMフェローに任命された浅川智恵子氏
IBMフェローに任命された浅川智恵子氏

 日本IBMは2009年6月4日,東京基礎研究所の浅川智恵子氏が,米IBMのフェローに任命されたと発表した。浅川氏は全盲で,ディステングイッシュト エンジニアとしてアクセシビリティの研究チームのリーダーを務めている。日本人としては5人めのIBMフェローで,日本人女性では初となる。

 浅川氏らの研究チームは1980年代に点字翻訳システムを開発。この成果は「ないーぶネット」として現在も視覚障がい者に利用されているという。また1990年代には,視覚障がい者向けにホームページを音声で読み上げるIBM Home Page Readerを開発,現在も販売されている。

 また視覚障がい者が利用しやすいホームページを作成するための基盤ソフトAccessibility Tools Framework,ホームページのアクセシビリティを検査するaDesigner,視覚障がい者のインターネット上の動画やアニメーションといったマルチメディア・コンテンツを利用を支援するaiBrowserを開発した。Accessibility Tools Framework,aDesignerおよびaiBrowserはオープンソース・ソフトウエアとして公開されている。

 2008年には,一般のユーザーと視覚障がい者が協働してWebのアクセシビリティを向上させるためのプロジェクトSocial Accessibilityを開設した。

 IBMフェローは同社における技術者の最高職位。日本IBMからは1996年の塚田裕氏(当時野洲研究所 実装技術開発担当),2001年の内藤在正氏(当時日本IBM技術理事)に続き3人目のIBMフェローとなる。日本人としては1967年の江崎玲於奈氏(1973年ノーベル物理学賞受賞・現 横浜薬科大学 学長・財団法人茨城県科学技術振興財団 理事長),2008年の伊藤洋氏(IBMアルマデン研究所)に続き5人目となる。

 今回IBMフェローに任命されたのは浅川氏含め8名。これまでIBMフェローに任命されたのは218名で,うち現在もIBMに在籍しているのは75名となる。