統一した個人IDを使うことで、行政サービスの効率化と利便性の向上が期待できる---。NPO法人東アジア国際ビジネス支援センター(EABuS:イーバス)が2009年5月に日韓で実施した「社会基盤としての国民IDに関する国民意識調査」では、冒頭のような統一個人IDに対する意識が明らかになった。

 調査は、日韓それぞれの25歳以上の2000人を対象にWebで実施。(1)統一個人IDの必要性に関する意識、(2)個人情報の共有や活用に関する意識、(3)統一個人IDの導入・運用管理に関する意識---について設問を用意した。日本だけでなく、1968年から個人識別番号制度を導入している韓国でも調査を行い、日韓の意識の違いを探ることも目的である。ここでは日本の回答を中心に結果を紹介する。

 まず、統一個人IDの必要性について。統合された個人IDに対する考え方を複数回答形式で尋ねた設問では、「行政サービスの効率化と手続きの利便性のために有効な制度」との項目に対して、「そう思う」「まあそう思う」を合計した肯定的な回答が66%に上った。さらに「行政による国民生活のセイフティネットを確保するために不可欠な制度」との項目でも、肯定的な回答が50%を占めた。統一個人IDに対して必要性や有効性を肯定する意見が、過半数に上る結果となった。

 一方、同じ設問で「利点より、セキュリティリスクの方が大きく危ない制度」に肯定的な回答も57%を占めた。また、「行政当局には都合がよいが、国民個人にはあまり役立たない」という項目も50%の回答があり、リスクを危惧したり有効性を疑問視する声も少なくないことが浮き彫りになった。

行政手続きや医療・保険の利便性に期待

 次に、個人情報の共有や活用に対して。現状では各種の公的機関が個別に管理している個人情報を、これから統一した個人IDに関連づけることで、どんなサービスが便利になると思うかを尋ねた。その結果、「行政手続き」「医療・保険情報」「老人介護」などで利便性が高くなるという回答がそれぞれ80%を超えた。この設問では、日韓の違いも表れた。日本では30%台と低かった「納税のための書類作成」「収入・預貯金の管理」は、韓国ではそれぞれ67%、58%と評価が高く、財産管理の側面で統一個人IDが有効に利用できるとの考えが韓国に強くあることが分かった。

 統一個人IDの導入・運用面の設問では、統一個人IDの管理機関として「既存の国の機関」を挙げた回答は34%であったのに対して、「個人情報管理を主務とする新しい国の機関」を求める回答が58%に上った。また個人情報がインターネットでやり取りされる際の考えについては、日本は「いくら暗号化しても信用できない」がトップ。一方、韓国では「いつ誰が閲覧したかを通知されれば許せる」がトップで、日韓のインターネットを介した個人情報利用への考えに違いがあることも分かった。