インターネットイニシアティブ(IIJ)は2009年5月28日、クラウドコンピューティング・サービスに関する事業戦略を発表した。年内にストレージやアプリケーション実行環境といったコンピュータ資源をサービスとして提供する計画という。基盤技術として分散データ処理技術などを独自開発する。コンテナ型データセンターの採用も検討中という。

 IIJが今回発表した独自の分散ファイルシステム「ddd(distributed database daemon)」は、米アマゾン・ドット・コムの「Amazon Dynamo」をモデルにしたキー・バリュー型データストアである。巨大なデータをピア・ツー・ピア(P2P)技術で連携する複数のノード(サーバー)に分散配置することで、データの入出力や検索を高速化できる。ノードを追加した分だけ処理性能が向上するのが特徴という。同社のテストでは「ファイアウオールのログ100Gバイトを解析するのに、1台のサーバーでは100分かかるが、10台のサーバーでdddを使用することで解析時間が10分の1に短縮した」という。

 IIJはdddを基幹ネットワークを流れるパケットを詳細に解析するシステム向けに開発した。同技術が分散ファイルシステムや分散データベースといった汎用の用途にも使えると判断したため、適用範囲を拡大する。ストレージサービスや、メール・ホスティング・サービスにおけるアーカイビング(データ長期保存)用途などにdddを採用する予定である。近々開始するLinuxディストリビューション「Fedora 11」の配布にも、dddを使用する計画。dddのプログラムは、CとC++、Rubyを使用して開発した。

 クラウドサービスを提供する物理インフラとしては、コンテナ型データセンターの採用を検討している。サーバーの冷却効率を上げられるコンテナ型データセンターは電力消費の削減が可能で、サーバー運用コストを大きく下げられるという。同社は2007年11月に、鉱山跡地にコンテナ型データセンターを用いたデータセンターを建造する計画を発表したことがある(関連記事:サン,IIJ,ベリングなどが鉱山採掘跡地に地底IDC,2010年4月に稼働)。しかしその後、「地震などのリスクも考えると、必ずしも適した立地とはいえないことが分かった」(IIJの鈴木幸一社長)ことから、現在は平地でのコンテナ型データセンターの展開を検討している。