丸紅インフォテックは2009年5月27日、価格が5万~6万円の小型ノートパソコンの販促イベント「UMPCフォーラム」を開催した。UMPC(ウルトラ・モバイル・パソコン)またはネットブックと呼ばれる低価格パソコンを、企業に拡販するのが狙い。現在は一般消費者向けが中心だが、経済危機で低価格志向が強まっている企業向けにも販路を拡大する。
「調査会社によれば2008年度の国内UMPC販売台数は80万台。中心となる市場は一般消費者だった。2009年度は100万台を見込んでいる。2009年に法人市場へ我々が打って出れば、120万台も夢ではない」。丸紅インフォテックの天野貞夫社長(写真1)は、こう期待を語った。同社は今年1月に専門の販促部隊「UMPC推進室」を発足。「近年まれに見る商材」(天野社長)であるUMPCを、企業向けに拡販していく考えだ(写真2、写真3)。
同フォーラムにはアスース・ジャパン、日本エイサー、日本ヒューレット・パッカード(HP)、レノボ・ジャパンのパソコンメーカー4社が参加した。いずれもネットブックを世界展開するメーカーの日本法人だ。各社の担当者が参加したパネルディスカッションでは、企業や教育機関といった法人市場への期待や、現状のUMPCが抱える課題などを議論した。
パネルには市場調査会社GFKジャパンから岩淵真貴シニアアナリストも参加した。同社は今年3月、企業のIT担当者にUMPCに関するアンケートを実施した。回答のあった1606社中、UMPCをすでに導入している企業は7%。予定している、検討しているといった回答まで含めると、全体の3割超の企業がUMPCに興味を持っていることがわかったという。大多数とは言えないものの、「企業においても可能性を期待できる」(岩淵シニアアナリスト)。
2009年は法人市場を目指す
メーカー4社の製品担当者はそれぞれ、法人市場への意気込みを語った(写真4)。「Eee PC」でUMPCブームの火付け役になったアスースのリンダ・シェー マネジメントマネジャーは、「これまでアスース製品は9割が個人向け。今年は法人向けのUMPC市場で1位を目指す。製品ラインナップも、修理や引き取りの体制もすでに整えた」とアピール。日本エイサーの楊博光プロダクトマネジャーも「Windows Vista BusinessをダウングレードしてWindows XP Professionalを搭載した企業向けモデルを、日本でも投入する予定だ」と述べた。
「これまで約1年間、ビジネスの種をまいてきた。今年は刈り取りの年だ」。こう語るのは日本HPの山下淳一 本部長。同社はUMPCのメーカーとして唯一、昨年から企業向けにも積極的に販売してきた。「過去1年間の販売動向を見ると、学校や大学といった教育市場に大きな可能性を感じる。企業向けでは外回りの営業担当者以外に、出張者向けに共用パソコンとして購入する、製造業の工場で使うといった案件もある」と、法人向けで先行した企業ならではの分析を披露した。
レノボの松本達彦マネージャーは「当社はUMPC市場では最後発。機能やデザイン、品質を充実させて、ビジネスでも使える製品を拡充していく」と語った。具体的には企業向けの主力製品ThinkPadの品質管理プロセスを取り入れたり、利用者の認証機能を強化したモデルを投入したりするという。