写真1●2008年度上期のスーパークリエータ11名(写真後段)。チェン ハンロン ドミニク氏は欠席
写真1●2008年度上期のスーパークリエータ11名(写真後段)。チェン ハンロン ドミニク氏は欠席
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写真2●「GPUを用いた映像のリアルタイム手ぶれ補正ソフトウエア」を開発した高橋賢治氏
写真2●「GPUを用いた映像のリアルタイム手ぶれ補正ソフトウエア」を開発した高橋賢治氏
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写真3●「室内3Dモデリング・システムとAPI」を開発した内田和隆氏
写真3●「室内3Dモデリング・システムとAPI」を開発した内田和隆氏
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 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2009年5月26日,東京都内で開催中のイベント「IPAX2009」で,2008年度上期の「スーパークリエータ」を表彰した。08年度上期のスーパークリエータは「全文検索エンジンLux」を開発した山田浩之氏ら12名(表1,写真1)。

 IPAは2000年から優れたソフトウエア開発プロジェクトの支援と人材発掘を目的とした「未踏ソフトウェア創造事業」を開始。毎年,スーパークリエータを認定している。これまでにVPNソフト「SoftEther」を開発した登大遊氏など有名プログラマを多数認定,輩出してきた。08年度上期は35件のプロジェクトを支援し,その中から特に優れた成果を収めた12名をスーパークリエータとして認定した。

 認定されたスーパークリエータの開発テーマは多岐にわたる。例えば,静岡大学大学院工学研究科1年の高橋賢治氏(写真2)が開発したのはGPU(Graphics Processing Unit)を利用したリアルタイムの画像手ぶれ補正ソフトウエア。デジタルカメラなどが採用するジャイロセンサーを使う手ぶれ補正システムと異なり,画像解析によってぶれを検出し,補正する。撮影後の映像に対しても手ぶれ補正を行える点が特徴である。同ソフトウエアは米NVIDIAが提供するGPU向けのプログラム開発環境「CUDA」を利用して開発。GPUを使うことで,CPUで演算した場合には不可能なリアルタイム処理を実現している。512×512ピクセルの解像度を持つ映像でも,30フレーム/秒を超える速度で手ぶれ補正を行える。

 ソニー出身でカディンチェ専務の内田和隆氏(写真3)はマンションの部屋などを容易に3次元データ化できるシステムを開発。独自開発のセンサーを用い,実際の空間を自動で3次元モデル化する。生成した3次元モデルをWebブラウザから扱えるようにJavaScriptのAPIも提供する。従来の3次元CGと,Googleストリートビューのような疑似3次元のパノラマ画像の長所を併せ持つシステムで,実空間の画像を使って3次元的に整合性のとれた表現が可能になっている。内田氏は「家具の配置シミュレーションなど,AR(拡張現実)的なアプリケーションを提案したい」としている。

表1●2009年度上期のIPA認定スーパークリエータ
名前開発テーマ
山田浩之全文検索エンジンLux
長井啓友パターンマッチング向けデータベース・システム
西川 玲手書き作図インタフェース
北山朝也リビングにネット・コンテンツを届けるDLNAサーバー・ソフトウエア「coRockets」
木浦幹雄Webサイト閲覧中のユーザー行動を可視化する
チェン ハンロン ドミニクThoughtTrace:思考プロセスの歴史を動的に記録・解析・表現する
内田和隆室内3Dモデリング・システムとAPI
小菅祐史Webアプリケーション・セキュリティの自動検証フレームワーク
梅谷信行インタラクティブUIを備えた統合型設計解析ソフトウェア
松田聖大Web文字画像化と行内レイアウト・システム
高橋賢治GPUを用いた映像のリアルタイム手ぶれ補正ソフトウエア
加藤史洋現実の料理で見えない調理状態の推測を支援する料理シミュレータ