写真1 「Gガイドリモコン」で番組を選び予約をしようとしているところ
写真1 「Gガイドリモコン」で番組を選び予約をしようとしているところ
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写真2 STBの録画モードを設定しているところ
写真2 STBの録画モードを設定しているところ
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図1 JCNが録画サービス用に開発したシステムの動作
図1 JCNが録画サービス用に開発したシステムの動作
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 大手CATV統括会社のジャパンケーブルネット(JCN)は,2009年6月1日から傘下の12局(市川,大田,小田原,鎌倉,コアラ葛飾,千葉,中野,八王子,船橋習志野,マイテレビ,武蔵野三鷹,横浜)において,携帯電話から家庭内に設置したHDD内蔵セットトップ・ボックス(STB)の録画予約ができるサービスを開始する。同社のレンタル用STBである「録りま専科」および「録りま専科DVD」のユーザーであれば追加料金なしで利用できる。

 今回のサービスは,携帯電話で家庭に設置されたHDDレコーダの録画予約を可能にするインタラクティブ・プログラム・ガイド(IPG)社の「Gガイドリモートアクセス」の仕組みを応用したもの。NTTドコモのiアプリまたはau(KDDI)のBREWアプリである「Gガイドリモコン」を使うか,携帯電話用のWebページを利用することで目的の番組を探して予約ができる(写真1写真2)。ただし,予約できるのは地上デジタルとBSデジタルの番組のみで,CATVの番組は予約できない。

 Gガイドリモートアクセスは,元来,パナソニックやソニーなどが販売している家庭向けのHDDレコーダ用に使われてきたもの。これらの機器では,HDDレコーダからサーバー向けに通信を開始することでNAT越えを行い,セッションを維持する。しかし,JCNのセットトップ・ボックスにはこうした仕組みが実装されていない。「同様の機能を実現することも検討したが,開発費用が膨大になることが分かった」(JCN情報システム本部システム開発2部の高塚広行課長)という。

 そこでJCNが目を付けたのが,リモート管理機能であるSNMPv3。この機能を利用すればCATV事業者側からユーザーのSTBに録画予約をセットできる。しかし,それにはJCN側でユーザーが利用しているSTBのIPアドレスを特定しなければならない。従来は,この特定の仕組みがなかったため,新たに実装することで,リモート予約を可能とした。

 具体的には,次のような仕組みでIPアドレスを割り出す(図1)。ユーザーがGガイドリモコンで番組を選択し,予約をすると,IPGのサーバーに携帯電話から機器IDとパスワード,録画命令が送られる。これがIPGのサーバーからJCN網とのゲートウエイに位置する「録画予約制御サーバー」に転送される。録画予約制御サーバーは,STBの機器IDとSTBに内蔵されたケーブル・モデムのIPアドレス(CM-IP),STB本体のMACアドレス(STB-MAC)の対応データベースを持っている。そこで,録画予約制御サーバーは機器IDとパスワードによる認証に成功したら,機器IDに対応するSTBのCM-IPとSTB-MACを「通信サーバー」に伝える。通信サーバーはCM-IPを使ってケーブル・モデムと通信し,STB-MACに割り当てられたIPアドレス(STB-IP)を問い合わせる。こうして,通信サーバーはSTBのIPアドレスが分かるので,これを使って録画予約制御サーバーが録画予約の命令をSTBに対して送ることができるようになる。

 なお,機器IDと,パスワード,STB-MACなどの関連付け作業はJCNの作業員がSTB設置時に実施する。携帯電話用アプリ「Gガイドリモコン」への機器IDとパスワードの登録は,作業員から渡されたメモを基にユーザーが個別に設定する。